学校の枠を超えて探究の「旅」に出ようー第4回iTanQ”X”開催 伊勢崎高
身近な社会課題を自らの手で深く掘り下げ、解決策を探る——。県立伊勢崎高校で探究活動の成果を発表する「第4回iTanQ”X”」が29日に開催された。県内外から中高生や教育関係者らが参加し、同校の生徒たちはフィールドワークを通じた研究成果の発表などを行った。さらに、参加者同士のグループ討論や専門家の講演を通じて、探究することの意味や学びの広がりについて考える機会となった。
同校の探究活動は身近な社会課題を解決するために、自分で一次情報を取ることを重視している。今回の成果発表会は1年間の取り組みを学校内外に発信し、探究活動の一層の充実を図るのが狙いだという。県内外の中高生、学校関係者など41校147人が参加。オンラインなどを活用して岡山県や長崎県など遠方の地域からの参加もあった。
午前の部は同校の探究活動などの成果発表を行った。総合的な探究の時間である「iTanQ蒼穹(そうきゅう)」の発表では1年生の大和咲友さんが「なぜペンの試し書きの紙に『あいうえお』と書く人が多いのか」という疑問をフィールドワークを通じて独自に分析した成果を報告した。2年生の西川蒼志さんは伊勢崎市内の自転車事故が多いエリアをインターネットで情報収集し、選んだ4地点に実際に足を運び、現場の道路状況を取材した。その取材結果に基づき、自転車事故が起こりやすい場所の特徴を自分なりにまとめ上げた。
同校探究部長の山口将史教諭が「(同校の探究活動が)学校を超えていく場面をどんどん設けていこう」と説明するように、昨年度、同校では「学校の外」に飛び出す機会が多かった。
発表会でも同校が昨年夏に実施した立命館大学大阪いばらきキャンパスのスタディーツアーの報告や11月にパリで開催されたOECD(経済開発協力機構)の「生徒・教師サミット」で派遣された生徒の発表、3月に実施された「マレーシア海外研修」について報告された。
成果発表会の後、参加者は教室に移動し、「生徒ー大人の交流会」が行われた。27のグループ(1グループ4~5人)に分かれ、「SNSの発展は私たちのコミュニケーション能力を低下させているのか」「公共交通機関の本数削減についての是非」などについて議論を交わした。
学校説明会と聞いて参加した伊勢崎市内の中学2年生の女子生徒は「(ディスカッションで)SNSのメリット、デメリットを考えるきっかけになった。(SNSと)うまく付き合っていく必要があると感じた。自分の考えも言えて良かった。探究の発表を聞いて外国へ行ったりできて楽しそう」と声を弾ませた。同伴した母親も「(同校は)以前に比べ国際的な取り組みをしていて、子どもたちの様子を見ていてもすごくいいなと感じた」と話した。
【写真】探究の成果発表をする生徒
【写真】OECDでの「生徒・教師サミット」に参加した生徒の報告
【写真】「なぜペンの試し書きの紙に『あいうえお』と書く人が多いのか」のプレゼン資料の一部
【写真】同校の探究活動を振り返る山口教諭
【写真】各教室に分かれて行われたグループ討論
午後の部は、同校の探究活動に協力している東京大名誉教授の上野千鶴子氏による「探究は何のため? 問いを立てるってどんなこと」というオンライン講演や慶応大准教授の井本由紀氏によるSEL(社会的情動的学習)に関する講演が行われた。
同校探究部長の山口教諭は「(授業や講演などで)今までは質問ありますかといっても挙手はほとんどなかったが、さまざまな探究活動を通じて積極的に質問したり、意見を表明できる生徒が増えた印象。希望参加の探究活動でも、生徒同士の口コミで参加者が増えてきていて、手応えを感じている」とこの1年の探究活動を振り返った。
学年の表記は25年3月時点のものです。
(編集部)