【シリーズ】校長に聞く(第4回) 県立伊勢崎高校 高橋みゆき校長(後編)
県立伊勢崎高校は自ら考え、判断し、行動できる生徒の育成を図るモデル実践校として、県教委から「SAH(スチューデント・エージェンシー・ハイスクール)」の指定を受けています。県内外の高校と一緒に探究に取り組むなど、活動の幅を広げ、個性ある学校づくりを進めています。後編は校長先生が「どうして学校の先生を目指したか」を軸にインタビューしました。
【写真】伊勢崎高校の高橋みゆき校長(同校・校長室で)
――そもそも、なんで学校の先生を目指したのですか?
「漠然とですけど、小学校の頃から学校の先生になりたいと思っていました。小学校のときは小学校の先生に憧れ、中学時代は中学校の先生もいいなあ、と。で、高校行ったら、やっぱり高校の先生になろうと。学校生活が楽しかったんでしょうね」
――具体的なきっかけは何かあったのですか?
「自分は教えるのが好きなのかも、と思った経験が小学校と高校の時にありました」
――どんな経験ですか?
「小学校の低学年の時、夏休みに調べてきたことをクラスのみんなの前で発表することを先生がやらせてくれたんです。発表テーマは『漢字の成り立ち』だったと思うんですが、それを一生懸命お家で模造紙に書いて、クラスの黒板に貼って、みんなに説明するという内容です。結構みんながよく聞いてくれて、その反応が良かったんですよね。それが嬉しくって。自分で調べて模造紙に書いたことは今でも覚えていますね」
――高校時代にはどんな経験を?
「高校1年の時に、当時の地理の先生が夏休み前に宿題を出して、クラス全員に世界中の国を一人ひとりに割り当てたんですよ。『あなたはイギリス』みたいな。わたしはマレーシアだったんですが、それを調べて、2学期になってから、みんなの前で授業するんですよ。自分の発表内容も友達の内容も今でもよく覚えています」
――その時の経験は現在の学校運営や探究での取り組みにに生かされていますか?
「先生の授業をただ聞くっていうんじゃなくて、自分で面白いと思って探究していくっていうのは確かに身につくという手応えをその時、感じたんですね。だからこういった探究的な学び方が子どもたちの力になるという確信みたいなものが、自分にはあると思います。探究という点では自分が家庭科の教員だったことも良かったと思います」
―― 「家庭科の教員だったことも良かった」といいますと?
「家庭科というと、料理や裁縫をイメージしがちだと思いますが、必履修で課題解決学習をやりなさいっていうことになっています。家族や地域といった身近な課題解決を考え、それをレポートにまとめる授業です。家庭科はいろんな要素が入っているので、他の教科と横断しやすい教科なんですね。例えば、SDGsの17のゴールもすべて家庭科につながっています。最近になって探究的な学び方というのが注目されて来ていますが、家庭科は70年前から(それを)実践してきたわけです。そういう点で、家庭科教員の経験が学校運営に生きていますね」
――30年以上の長い教員生活の中で印象に残る出来事ってありますか?
「ある高校での話ですが、(その高校に)仕方なく入学してきた男子生徒がいました。『本当にこの高校生活、早く終わんないかな』って思っている子が何人かいたんですよね。学校来ても面白くないし、居場所もない。たぶん居場所を求めていたんでしょうね。それで放課後、毎日のように家庭科準備室に来ては取りとめのない話をしていくようになりました。『毎日来てるんだったら調理室で料理でも作れば?』って彼らに言ってみたんです」
――先生がおいくつの頃のお話ですか?
「30代のころですね。今は男子が料理するのは当たり前ですが、当時はちょうど家庭科が男子でも始まるという頃でした。高校生クッキング選手権というのがテレビでやっていて、『これ出てみる?』みたいなノリで応募したら、予選通過して、東京の本大会に出場したんですよ。当時、男子が料理作るってまだ珍しかったので、話題性もあったと思うんですよね。そしたら、あれだけやる気がなかった生徒がみるみる生き生きしてきて…。最初は学校がつまらないと思っていた生徒たちが料理をきっかけにして、活躍の場を自分で見つけて、注目をされるようになって。学校のみんなが彼らを応援してくれました。教師として生徒が変わっていく姿を見るのが非常に嬉しかったし、楽しかったですね。子どもたちがキラキラしていく、エージェンシーを発揮していく姿を見るのが、教員って一番嬉しいんことだと思うんですよね」
――素敵なエピソード、有り難うございました!
(聞き手・峯岸武司)