【教育コラム】「一斉指導」からの脱却(後編)(NEXTAGE SCHOOL 髙澤 典義)
今回は「一斉指導」をテーマにお話ししています。ここから読み始めた方は、前回までの内容を読んでいただいてから読み進めていただいた方が理解が深まるかもしれません。
|一斉指導における3つの課題
ここまでを踏まえて、あらためて言いたいことは、”一斉指導は時代遅れだ”ということです!!
これは、この教授法のみに依存することに対する問題提起です。
一斉指導の課題① 「時代の変化」
1番の課題感は、”時代の変化”という点です。
先ほど述べたように、高度経済成長期においては、学校教育でも、大量の知識を習得して問題を早く正確に解くことが重視されていました。その学校の勉強で養った能力で、その組織でも仕事ができていたのです。
しかし、現在の高度情報化時代では情報の更新が目まぐるしく起きます。新たなテクノロジーが既存のルールや仕組みを変えます。そんな時代に求められる力は、新しい価値観やルールに適応する力です。自分で新しいものや仕組みを生み出す人です。
求められる能力はとっくに変わっているのです。にもかかわらず、教育の見直しはさほどなされてきませんでした。もちろん一斉指導が全て悪いのではありません。基本知識の習得には一斉指導が効率的です。ただ、一斉指導には時代が求める力の育成に向いていない部分もあります。一斉指導では他人と議論したり、プレゼンテーションする時間をあまり取ることができません。日本の教育が、時代に求められる能力の育成に遅れをとったのです。
一斉指導の課題② ICTがある
2つ目の課題感は、”ICTがある”という点です。
幸いGIGAスクール構想によって、一人一台のパソコン、またはタブレットが支給されています。これを活用しての授業の構想は、短期的に見たら教員の負担かもしれませんが、長期的に見れば、確実に教員の負担減につながります。もはや先生が一人ひとりに配られたようなものです。
正しくソフトを選び、いい意味で授業を仕組み化することで、教員の負担は今ほど大きくなく、多くの児童生徒に個別最適化した授業をすることが可能です。そこを取りに行かずに、これまでのやり方にこだわっていると、かえって非効率かつ児童生徒の力がつかないという事態になってしまいます。一斉指導は一部でいいのです。そのことを理解しないで一斉指導を行うのは、疑問が残ります。
一斉指導の課題③ ついていけない子
3つ目の課題感は、”ついていけない子”を生んでいるという点です。
先にも述べたように、一斉指導のみの教授法では、個々に目を向けることが難しいです。理解していても、していなくても授業は進んでいってしまいます。授業を受けている様子を見ただけでは、理解度を十分に察することができません。実は”ついていけていない子”が存在しているというのが実際です。それを放置していてはマズイわけです。
個別最適化した指導を行えば、その子のペースに合わせた学習が可能です。ひいては、多少ゆっくりだったとしても、確実に力をつけていくことができます。”ついていけない子”としっかりと向き合えることのできない一斉指導には、やはり疑問が残ります。
|教科指導の一斉指導は条件付きで不要
結論です。教科指導の一斉指導は、条件付きで不要です。
まだまだ「授業=一斉指導」という図式が根強く残っています。
もっと、建設的に教員が世の中の現状をとらえ、改善の方向に動き出さねば、本当に教育界は危険です。危ない状況にあるものを現在は見事に見て見ぬふりをして逃れていますが、このままでは、どこかで爆発します。
その前に、授業の在り方を見直し、良い意味で仕組み化された、より現代の効率にあった学習方法で授業をすることにより、教員の負担を解消するとともに児童生徒に学力を付けていくことが必至だと思います。
さて、今回は、教科指導の方法の一つである一斉指導についてお話をさせていただきました。
一番引っかかるのは、時代が変化しているのにもかかわらず、授業が変化しきれていない点です。本気で業務改善をするのなら、これまでの常識を覆さなければなりません。
教員の精神疾患による休職の増加が物語るように、教員の精神衛生上もかなり良くないと思います。ICTの環境が整い、学校を、子どもたちを取り巻く環境が変化している今だからこそ、改革が必要です。
私は、良いものを独断で積極的に採用できる道を選びました。変化の激しい時代には、小回りが効く方が有効だと考えます。やってみてダメならまた別の方法を考える、永遠に進化し続ける学び場をつくりました。子どもたちのことを本気で考える学び場です。
強制されるではなく、自らの意思で仕事をしていくことを選びました。大切なのは、自分が納得できているか、そうでないかではないでしょうか?
私自身は外から教育を変えていきたいと思っています。
主宰 髙澤 典義
大学卒業後、18年にわたり公立小、中、特別支援学校において勤務。2015年から3年間在外教育施設(ソウル日本人学校)における勤務を経験。2021年教師を辞め、桐生市にNEXTAGE SCHOOLを開校。