【学校探訪記】開校12年、ぐんま国際アカデミーの現在(2)
2005年、ぐんま国際アカデミー(GKA)の初等部が開校した。あれから12年の歳月が流れ、今年の春、初等部からの生え抜き組が初めて高等部を卒業した。太田市にある個性派の学校はどう進化したのか。GKA中高等部の「現在(いま)」を3回にわたって、レポートする。今回は2回目。(編集部=峯岸武司)
■学びの環境は異空間
GKA中高等部は初等部に入学してからエスカレーター式に進級できる。初等部から中等部、中等部から高等部に上がるタイミングで進級試験は行っていない。こういった「壁」がない分、さまざまな活動にチャレンジする「ゆとり」が生まれるのかもしれない。
「高校生ビジネスグランプリ」2年連続ベスト100入賞、「Poly-U」香港理工大学での決勝プレゼンへの参加、ぐんまプログラミングアワードでキッズ部門優勝。ディベート甲子園の出場。カラオケバトルで活躍する生徒もいる。
GKA生の課外活動での活躍ぶりは枚挙にいとまがない。
「勉強以外、校外の行事に積極的に参加するのが本校生の特徴ですね。日常生活を豊かにすることそのものが、受験勉強にもつながっていると伝えています。」と横塚副校長は話す。
取材に同行した学習塾の先生がGKAに到着するや否や「もう部活動やってるんですかね」と言っていた。校舎から管楽器の音が響いてきたからだ。放課後をイメージさせる吹奏楽部の、あの練習の音だ。しかし、時間は午前10時。部活にはまだ早い。
横塚副校長に音楽室を案内されたとき、その謎は解けた。
「本校の生徒は初等部で一つの管楽器を身につけてもらい、音楽の授業ではジャズをやったりします」。各自が自分の好きな管楽器を選び、それを長い期間かけて習得する。音楽の授業を通じて、楽器を「伴侶」にできる。
【写真】音楽室の様子 授業ではジャズを演奏する
【写真】音楽室の隣の部屋には生徒たち自身の楽器がずらりと置かれている。
10年生(高校1年生)で生徒全員が行う学校設定科目「グローブ」の授業では映画監督の指導を受けながら、自主制作の映画制作に取り組む。制作した映画は一般にも公開される。
「課外活動」だけではなく授業自体がユニークだ。
GKAの校舎を見学していると、ここが日本であることを忘れてしまう。まるで外国だ。掲示物はもちろん英語で表記されている。教室や廊下に貼られた掲示はどことなく海外の学校の空気が漂う。校内放送も英語だと説明を受け、驚いた。
【写真】廊下や教室の掲示物は英語で書かれている。
教員の約半数が外国人。そんな環境がゆえに、職員同士のコミュニケーションも当然、英語を使って行われる。
校舎を案内してもらっている際、横塚副校長が数人の先生たちと会話を交わす場面があった。いままで日本語で学校説明をしていた横塚副校長だが、瞬時に英語モードに切り替わる。聞けば、ミーティングも英語だそうだ。まるで外資系企業だ。
生徒も全員が日本人というわけではない。外国人の子どもも在籍している。
校舎内を歩くと子どもたちも自然に英語でおしゃべりをしている。もちろん日本人同士でも英語でのコミュニケーションだ。生徒が教室で先生が来るのを待つのではなく、担当の先生がいる教室まで生徒が移動する。こういったスタイルも「欧米流」だ。
「英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ」。進路主導主事の桐生先生が説明する通り、その英語へのこだわりは細部まで行き届いている。
そして、そのこだわりはしっかりと実績にもつながっている。
「GKAの中で相対的に英語が苦手な子でも、海外の映画を字幕なしで楽しめるリスニング力を持っています」(桐生先生)。この言葉を裏付けるように、英語の資格試験でも実績を出している。
たとえば7年生~11年生(中1~高2)のTOEFL ITPの全体の平均スコア(2015年)は473点。この数字は日本の高校生の平均である428点、4年制大学の学生の平均である465点を上回る数値だ。10年生・11年生に限定するとスコアは平均で500点を超える。これはアメリカの大学留学に必要なスコアに該当する。
「ずいぶんエッジのきいた学校ですね。こういう学校が一つくらいあってもいいですよね。自分がアメリカに留学した時の学校の雰囲気に似ています」
同行した塾の先生は、GKAの様子を見て、そうつぶやいた。
(つづく)