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【学校探訪記】開校12年、ぐんま国際アカデミーの現在(3)

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【学校探訪記】開校12年、ぐんま国際アカデミーの現在(3)

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2017.04.29 
tags:GKA, ぐんま国際アカデミー 中高等部, ぐんま国際アカデミー 国際バカロレア, ディプロマプログラム, 国際バカロレア認定

国際バカロレア(IB)認定を受けた一条校は国内に20校しかない。

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 2005年、ぐんま国際アカデミー(GKA)の初等部が開校した。あれから12年の歳月が流れ、今年の春、初等部からの生え抜き組が初めて高等部を卒業した。太田市にある個性派の学校はどう進化したのか。GKA中高等部の「現在(いま)」を3回にわたって、レポートする。今回は最終回。(編集部=峯岸武司)

 

■国も推進する国際バカロレア(IB)認定校
 GKAは国際バカロレア認定を受けた学校だ。
 こう聞いても、ピンとこない人もいるはずだ。この認定資格は最近メディアに登場する機会が増えてきたものの、まだまだ目にすることはそう多くない。いったい「国際バカロレア」とはどのような認定なのか。GKAを理解するためには、この国際バカロレア認定について知っておく必要がある。
 この認定資格についてよく分からない方はしばらくお付き合いいただきたい。

 そもそも、「国際バカロレア」とは、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置された機関だ。スイスのジュネーブに本部を構える。
 国際バカロレア資格は「世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラム」のことで、1968年、総合的な教育プログラムとして誕生した。
 世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、子どもたちに対し未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身につけさせることを理念として掲げている。
 国際バカロレア資格(IB)がにわかに注目されるようになったのは、国が「国際バカロレアDP認定校200校計画」を打ち出したことがきっかけだ。日本が国際競争力を向上させるためには人材育成が重要であるとして、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略の中で「2018年には国際バカロレアDP認定校を200校まで増やす」という目標を明記した。そのことでマスコミにも国際バカロレアが取り上げられることが増えた。
 平成29年4月現在でIB認定校は学校教育法第1条に規定されている学校(一条校)ではGKA含め国内に20校ある。

(リンク)認定校一覧 :文部科学省サイト
 
 国際バカロレアの教育の利点は主に2点あると言われている。
 1点目は「ディプロマ」という認定証書が世界各国の多くの大学で正規の入学資格や受験資格として認められていることだ。海外の大学に進学したい人にとっては武器を手に入れることができる。国内でもIBを活用した大学入試は増えている。
 
(リンク)IBを活用した大学入試事例:文部科学省サイト

 2点目はグローバルに活躍するための力を身につけることができる要素が含まれているという点だ。
 すべてのIBプログラムは、人類共通の人間らしさと地球を共同で守る心を知り、平和でより良い世界を築くために貢献する、国際的な視野を持つ人間の育成を目指している。
 具体的には教科の枠を超えて、論理的思考力や批判的思考力(クリティカル・シンキング)、コミュニケーション能力などを養うための授業が展開される。知識とは何か、知識をどう獲得すればよいのか、知識をどう使いこなすか、といった課題について、自分たちで問題を設定し、自ら学習していくのが特徴だ。「答えのない問題」に対応していく力を身に付けるための学習だ。あまり日本の学校の授業では見られない形態の授業だ。
 このような独特なカリキュラムを通じて、グローバルに活躍するための力を養成するのが国際バカロレアの教育プログラムである。
 
(リンク)文部科学省 国際バカロレアについて
 
■大学入試改革は「追い風」
 さて、GKAでは高1にあたる10年次の秋にIBコースに進むか国内進学コースに進むかを選択する。
「カリキュラムそのものが全く違うので、生徒にとっては大変重要な選択になります」と進路主導主事の桐生先生は説明してくれた。IBコースは国際バカロレア認定のディプロマプログラムを取り入れたコースで、海外の大学で広く認知されているのは先述の通りだ。国内の大学でも早稲田大学や慶応大学などの難関校ではIBコース生でないと受験できない試験が存在する。
 このコースでは学習指導要領ではなく国際バカロレアの定めた教科を履修することになる。IBでは国語を除くすべての授業が英語のみで進められる。
 桐生先生の説明によると「コースの選択は生徒の希望で決めますが、IBコースに進むには一定の学力基準と英語力の水準を推奨要件として提示しています」とのことだ。
 IBコース選択者は留学する生徒が多いのか。実際はそうとも言えないようだ。たとえば、今年の卒業生の場合、18名のIB生のうち、海外進学組は2名にとどまる。昨年度は14名中6名だ。

 一方、国内進学コースは文科省の学習指導要領にのっとったカリキュラム構成だ。こちらはどちらかといえば、普通の高校に近いイメージだ。とはいっても授業の一定割合を英語で行う点では、他の高校とは一線を画している。
 
gka図書館2
 
gka図書館3
【写真】GKAの図書室には洋書が並ぶ。洋書を一定数揃えることも、IB認定校の重要な要件だ。
gka学習スペース
【写真】GKAの学習スペース
 
 国際バカロレア認定を受けた学校は国内にはまだまだ少ない。その意味で、GKAは希少な存在だ。
 2020年には大学入試改革が本格的にスタートする。英語の4技能化など、国はますます英語教育重視に舵を切る。グローバルに活躍できる課題解決型の人材を育てることは産業界の要請でもあり、国の国際競争力を高めるためにも不可避だ。
 大学入試自体の価値観が従来のものから変わろうとしている。日本の高等教育はまさに過渡期にある。
「英語4技能の評価だけでなく、多面的・総合的評価もこれからの入試のキーワードです。その意味で本校の生徒のユニークな高校生活が活かせると思っています。大学入試改革はGKAにとって大きな追い風だと思っています」。進路指導主事の桐生先生は話す。
 
 取材後、ある子育て世代のお母さんに「GKAってどういうイメージ?」と質問してみた。「GKA? 英語の学校でしょ? うちは留学とか考えていないしねぇ」という答えが返ってきた。GKAに対してこういうイメージを抱く人は少なくない。しかし、これが世間一般のイメージだとすれば、その表現は正確ではない。英語を通じて自ら課題を見つけ、主体的に学ぶ力を養成するのが、同校の指導目標だからだ。英語はそのための手段でしかない。GKAが見据えているのは世界に通じる人材の育成だ。
 開校12年。初等部の入学者が初めて高校を卒業した。GKAの真価が問われるのはまさにこれからだ。今後のGKAがどのように形を変え、進化していくのか楽しみだ。
 
<メモ>
ぐんま国際アカデミー
生徒の内訳は初等部で太田市内が50%、太田市以外の県内が28%、県外が22%、中高等部が52%、24%、24%という構成(2016年)になっている。「ただ太田市内は遠方からの移住者も含まれます」(副校長)
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