インフルエンザ、今年の流行は?ー県衛環研に聞く
11月3日以降の群馬県内での新型コロナウィルス感染症の新規陽性者は1ケタ台を推移し、15日には、PCR検査での陽性者は確認されなかった。新規陽性者が0名だったのは6月22日以来144日ぶりのこと。県内での新型コロナ感染の拡大は一旦落ち着きを見せている。
群馬県内の新型コロナのワクチン接種率(2回接種)も11月18日には77.1%に達し、全国的にも高水準を維持している。
一方で、受験生を抱える保護者からは「(新型コロナの)第6波とインフルエンザが同時に流行したら…」と不安を訴える声も聞こえ始めている。
昨年は感染の流行がなかったインフルエンザだが、今シーズンはどうなるのか。県衛生環境研究所に話を聞いた。
|昨シーズン、激減したインフルエンザ
昨シーズン(2020/21シーズン)は群馬県も全国と同様、インフルエンザ患者報告数が激減し(下グラフ)、集団発生事例(インフルエンザ患者が施設内で10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合)の報告もなかった。
これについて、県衛環研では「新型コロナウイルス感染症の感染予防策として普及した手指衛生やマスク着用(咳エチケット)、三密回避、国際的な人の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったのではないか」と分析している。インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスとの間にウイルス干渉が起こった可能性もあるという。
群馬県内のインフルエンザ患者報告数の推移
(群馬県ホームページより)
|インフルエンザ 今シーズンの流行は?
では、今シーズンの群馬県内のインフルエンザの流行についてはどうなるのか。
県衛環研の担当者は「流行するかどうかは不明」としながらも、「前シーズン、インフルエンザに罹患した人は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられます。そのような状況下で、海外からウイルスが持ち込まれれば大きな流行を起こす可能性もあります」と警鐘を鳴らす。
新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着き、県民の中で感染予防対策のゆるみが生じると、それがインフルエンザの流行につながる恐れもあると懸念する。
インフルエンザ流行の予測には南半球での動向が参考にされる。
日本感染症学会によれば、今シーズンにおいて、オーストラリアからのインフルエンザ確定患者数の報告は昨シーズン同様、きわめて少ないそうだ。このことから北半球での流行も少ないのではないかとの予測もある。
一方で、WHOの報告では、バングラデシュで2020年後半にA型、2021年夏にB型の流行があり、インドでも2021年夏にA型が流行している。日本感染症学会は流行の背景として「これらの国々では、インフルエンザワクチン接種が普及しておらず、社会全体のインフルエンザに対する免疫が低かった」ことを挙げている。
このバングラデシュやインドでの流行が国内への感染流行に及ぼす影響はあるのか。
これについて、同学会ではインフルエンザが小流行を繰り返すことで、これらの地域でウイルスが保存され、今後国境を越えた人の移動が再開されれば、世界中へウイルスが拡散される懸念があると分析する。国内でも「感染拡大に備えて、インフルエンザワクチンの接種を推奨」(同学会)している。
今のところ、県内でのインフルエンザの流行は見られないが、例年だと11月~12月にかけて流行の兆しを見せ始める。その動向を注視することで、今年の流行がどうなるのか分かるかもしれない。流行すればちょうど受験期に重なるため、受験生控えた家族はいっそうの予防が必要だろう。
|インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの併用は?
新型コロナワクチンを打った場合、あわせてインフルエンザワクチンを接種する上で注意することはあるのか。
県衛環研の担当者は、「原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種できません。ただし片方のワクチンを受けてから2週間後に接種することは可能です」と話す。接種スケジュールのこともあるため、かかりつけ医など医師に早めに相談することを勧める。
ただ、ここで注意したいのは、ワクチンを接種したからといって、体の周りにバリアを作り、体の中にウイルスが入らないようにするわけではないということだ。たしかにワクチンは感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止には有効だ。だが、接種したことで、感染するリスクがゼロになるわけではないことを意識することを忘れてはならない。予防を継続していくことが重要だ。
この点について、県衛環研の担当者は「外出後の手洗い、適度な湿度の保持、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、人混みや繁華街への外出を控えるなど引き続き感染予防対策をお願いしたい」と感染予防対策の継続を呼びかける。
(編集部=峯岸武司)