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【コロナ禍の家族】社会的な足止めを受ける方が怖い

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【コロナ禍の家族】社会的な足止めを受ける方が怖い

ライフ

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2022.01.30 
tags:オミクロン 専門家, 新型コロナ 群馬, 群馬 コロナ 部活, 群馬 病床使用率, 高崎 コロナ 部活動

新型コロナウイルス感染症で群馬県は29日、新たに1099人の陽性が判明し、2人が死亡したと発表した。

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 学級閉鎖、部活休止…。新型コロナウイルス感染症に年を開けても「家族」は振り回され続けている。

 県内の多くの市町村が部活休止を決定する中、高崎市は活動を制限しながらも部活動の継続を決めた。この方針を子どもを持つ親たちはどう受け止めたか。保護者の声を中心に取材した。

 

◆部活休止か継続かの狭間で

 県内の新型コロナ感染症の感染拡大が続いている。

 第6波は10代への広がりも目立ち、県の発表では学校でのクラスターの発生も1月25日までの1週間に22件確認されたという。この状況を受け、県教委は26日、県立学校の対応について発表。部活動での感染が増えているため、部活については運動部・文化部に関わらず、県立学校ではは1月28日(金)~2月13日(日)までの期間は休止を決定した。(ただし、全国大会などの出場を除く)。市町村教委や私立学校に対しても県の方針が伝えられた。

 すでに桐生市や館林市などでは部活動は全面休止になっていたが、県の方針を受けて休止を決定した市町村もある。

 その一方、高崎市は対外試合を自粛し、感染リスクが低い活動に限定して継続。上毛新聞の報道によれば、高崎市教委は「生徒の居場所や心のよりどころとしての部活動の役割も考慮した」と説明しているという。

 小・中・高の3人の子供を持つ高崎市内在住の母親は「(継続といっても)密にならないように活動の内容を変更しているようです。力を入れている部活動は週末も継続しています」と学校での部活動の現状を話す。もしクラスターが発生した場合、だれが責任を取るのだろうと不安を感じながらも、休校などにならず、学校が通常通りに継続されることで、「(自分の仕事のシフトなどが)振り回されないので助かる」と本音をのぞかせた。 

 こんな声もある。

「どうしても感染が気になる場合は最終的に家庭判断で休むことはできるので(部活動を)禁止にはしなくてもいいのでは」(高崎市・中2父親)

 ただ、市内でも対応は一律ではなく、ある程度、学校の判断も働いているようだ。

 中学生の子供を持つ高崎市在住の父親は「高崎市内でも地区によって状況が違うようで、うちの地区は他の市と同様に部活停止になっているようです」と教えてくれた。中1生の子供を持つ同市内に住む母親は「自治体によって判断基準が違うのか、それとも感染状況が違うのか分からない」と市町村によって対応が異なる現状を不思議がる。

 公立中高一貫校2年生の息子を持つ太田市内の母親は、「部活がなくなって早く帰宅したとしても、どうせ家でゴロゴロしたりゲームしたりしているから、部活があった方がいいと思う」と活動内容を制限しつつも継続を決めた高崎市の判断を評価する。

 ネット上では高崎市教委の対応を批判する声もあがる一方で、部活継続を支持する声も少なくない。

 

◆社会的な足止めの方がリスク

 太田市内で受験生を抱える母親は先週末くらいから、喉に違和感を覚え始めた。痛みもなく、体温も平熱だが、ひょっとしたら自分も感染したのではないかと不安を抱えている。

「芸能人が平熱で症状もなくPCR検査を受けて陽性になったりしてるじゃないですか。もしかしたらって」。

 県内の薬局で感染の不安のある人を対象に無料検査を実施していることを知って、自分も受けてみようかと悩んだ。「陰性が証明されれば安心できますしね」。ただ中3の息子が2月8日に公立の前期入試を控えている。こうした状況で「今、家族で陽性者を出すわけにはいかない」と検査はしないことを決めた。

 これだけ広がっている現状でコロナに罹患することへの恐れは以前よりなくなった。むしろ「(検査で)陽性になったり、濃厚接触者になって、家族が社会的な足止めを受ける方が怖い」と彼女は胸の内を明かす。

 感染者を出したくないとナーバスになっているのは学校側も同様だ。

 伊勢崎市内の中学校に通う3年生の女子は、水曜日に少し喉の痛みを感じた。熱はなかったが、念のため医者に診てもらってから登校。「時期も時期なので明日まで出席停止で」と学校からは言われた。

 学年末で授業回数も残り少ない。公立高校の前期入試や後期入試を控え、できれば学校を止めたくないという教育現場の思いが透けて見える。

 

◆上昇する病床使用率 軽視は危険と専門家は警鐘

 WHO(世界保健機関)は25日、オミクロン株は各国で感染者数が急増しているにもかかわらず、重症化や死亡のリスクは低いようだと報告した。実際、デルタ株に比べ感染力は強いが、重症者数や死者数は少ない。県内でも連日1000人を超える感染者数を出していても「普段通り」を求める声が少なくないのは、こうした背景がある。

 とはいいながらも、28日の群馬県内の病床使用率は56.7%に達し、2週間前から右肩上がりに増えている。医療体制がひっ迫すれば、社会生活維持が困難な状況になり、救える命も救えなくなる可能性すらある。

 新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーとして、政府に数々の助言をしてきた独立行政法人国立病院機構三重病院(津市)院長の谷口清州医師が東洋経済オンラインの記事(医師が警鐘「オミクロン急拡大で今伝えたいこと」新フェーズに入る中で考えるべき「3つの対応」/鈴木理香子)でこう警鐘を鳴らす。

「オミクロン株は軽症のことが多いといわれていますが、感染者の数が増えれば一定数、重症者は出てきます。重症化率が1000分の1でも、100万人がかかれば、1000人は重症化します。また、後遺症についてもまだわかっていません」

(編集部=峯岸武司)

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