【学校探訪記】桐生清桜高校、開校1年の現在地
県立桐生南高校(昭和38年開校)と県立桐生西高校(昭和55年開校)が統合され、2021年4月に新高校が誕生した。群馬県立桐生清桜高校だ。開校してから1年。同校の「いま」を取材した。
■2校が「合流」して生まれた桐生清桜高校
桐生清桜高校(上原清司校長)は桐生市相生町と川内町をつなぐ相川橋の近く、渡良瀬川が流れる閑静な場所にある。「桐生西高校が県内でも有数な広大な校地をもっていたので、統合後はこちらの校舎を活用することになりました」と丹羽教頭先生は説明してくれた。統合するにあたり、既存の校舎の改築に加え、新教室棟・第2体育館が新築された。
桐生清桜高校は渡良瀬川沿いにある
生徒玄関の様子
新設された新教室棟 多目的室や講義室がある
新設された第2体育館(1階)
徒歩で10~15分圏内にわたらせ渓谷鉄道の運動公園駅や上毛電鉄の桐生球場前駅があるので、比較的広域からも通学しやすい環境だ。
「清桜」の校名は桐生西高校の象徴である渡良瀬川の〝清流〟と桐生南高校の象徴である〝桜〟に由来している。校章もそれらをモチーフにしたデザインとなっている。
校名以外にも2つの学校が統合された証は校内随所に残されている。
たとえば、第2体育館前のグラウンドに面した場所には、旧桐生南高校の校章と校歌の刻まれた石碑と旧桐生西高校の校歌が刻まれた石碑が並んで立っている。
清桜高校の校歌。ここにも旧高校2校のDNAが受け継がれている。校歌を作曲したのは元桐生西高校の職員で前橋西高校の校長を務めた広沢秀伸氏、作詞は桐生南高校の最後の校長である奈良茂氏の手によるものだ。
旧 桐生南高校の校歌碑
旧 桐生南高校の校訓
旧 桐生南高校の校章の碑
旧 桐生西高校の校歌碑
■「進学重視型単位制高校」って?
現在の清桜高校の概要について、同校の丹羽教頭先生が説明してくれた。
「今の高校3年生が旧南高校と旧西高校の生徒が半々ですね。高校2年生からは新高校の生徒です。6クラスで編成されています。3年生は旧南高校が3クラス、旧西高校が3クラス、2年生以降は普通科が4クラス、アドバンスト探究コースが2クラスの編成になっています」
「普通科」は大学進学も含めた多様な進路に対応するコース。「アドバンスト探究コース」は強く大学進学を希望している生徒を対象に募集している。ただし、途中からの転コースはできない。コースは分かれているが、学校行事はすべて一緒に行われる。
両コースとも単位制の形態をとり、国公立大学や私立大学の各入試に対応した選択科目を充実させ、生徒の進学を的確にサポートできるカリキュラムになっている。「学校案内」のことばを借りれば、「進学重視型単位制高校」だ。
「単位制と言っても1から10まで自分の時間割が自由に作れるわけではなく、選択科目の部分の組み合わせを個々変えられるということです。1年次は共通科目を学び、2年次からは各自の進路希望に応じた科目選択が可能です」と丹羽教頭先生は話す。
【図】桐生清桜高校のカリキュラム(青い部分が選択できる) 昨年度の「学校案内」から引用
制服のバリエーションは女子はスカート以外にスラックスも選べる。ネクタイとリボンを選ぶことも可能だ。
〝統合あるある〟だが、3年生は旧南高校の制服と旧西高校の制服が混在しているそうだ。もちろん3年生でも新高校の制服を選ぶこともできる。
■受験生からも高い関心が集まる
今年の入試(後期最終倍率)は「普通科」が1.09倍(前年0.75倍)、「アドバンスト探究コース」は1.95倍(前年1.35倍)と両コースとも大幅に倍率を上げた。受験生からの関心の高さがうかがえる。
後期選抜に関しては「アドバンスト探究コース」を第1希望、「普通科」を第2希望という形で出願することができる。もちろん、「アドバンスト探究コース」だけを志望することもできるが、大多数の受験生が第1・第2希望を書いて出願したという。
「(初年度は)統合されることでどんな学校になるのか見えにくい部分があったが、実際に入学した生徒がいて、(その子たちが)1年通ってみて、学校のカラーが見えやすくなったことも倍率を押し上げた要因じゃないでしょうか」と丹羽先生は分析する。
昨年夏、中学生と保護者向けの学校説明会が市民文化会館で行われた。その際、当時の1年生に「探究活動」など学校活動の紹介をやってもらった。
「その生徒たちの説明も(参加者の)アンケートでとても好評でした。こういう通っている生徒の生の声も大きかったように思います。それ以外にも、生徒が自主的にCO-OP(生協)とタイアップして貧困な子どもたちを支援するための活動を始めました。これは授業の一環ではなく、自発的な取り組みです。校内でこの活動を行うのを認めてもらうため、生徒自ら当時の校長にプレゼンをしました。このペットボトルのキャップの回収のボランティアはメディアや同窓会の場で紹介されたりしました。(こういう取り組みも)清桜高校ってこういう学校なんだよという印象につながったのかなと思います」(丹羽教頭先生)
だが、新しい高校として学校づくりの土台を作っていかなければならない時期とコロナ禍と重なってしまった。「まだまだやり切れていないことはたくさんある」と丹羽教頭先生は悔しさをにじませる。
「思い描いていたことがコロナ禍で制約されてしまいましたよね・・・。新しい行事や修学旅行などがなかなか思うようにいかなかったり、卒業式も2年続けて、3年生とその保護者だけで、在校生はオンラインでの参加になってしまいました。(コロナの時代で)集団生活の一体感とかを出しにくいところがもどかしいですね」
【写真】中庭に設けられた「さくらテラス」。ここで生徒たちが一緒にランチなどを楽しめる予定だったが、コロナ禍でまだ積極的な活用ができていない。
桐生清桜高校の現在地。それはさながら淡水から海水に流れ出る「汽水域」にあるといっていいのかもしれない。ちょうど新旧混じり合った合流域だ。少しずつ学校としての色合いをはっきりさせながら、大海原に流れ出ようとしている途上にある。コロナが収束し、「清桜高校」らしさを打ち出せる一年になればと生徒たちも先生たちも期待を寄せる。
(編集部=峯岸武司)