樹徳高理科部、繊維学会秋季研究発表会で全国一の評価
群馬県ならではの農業副産物こんにゃくとび粉とキャベツパウダーを、蚕の人工飼料に配合する研究に取り組んできた樹徳高校理科部(広井勉・丹羽良之顧問、嵯峨春日菜部長、部員45人)が、繊維学会秋季研究発表会の高校生セッションで最優秀賞に輝いた。地域性を生かした先輩からの研究を引き継ぎ発展させ、サステナブルな社会や地場産業の活性化も視野に入れたユニークな内容で、全国一の高評価を得た。
繊維学会秋季研究発表会は鳥取市でハイブリッド開催され、高校生セッションはオンライン参加。事前にプレゼン動画を送り、11月8日に繊維の専門家らと質疑応答、参加校の中から「カイコの人工飼料に関する研究」の樹徳高校が最優秀に選ばれた。
同校理科部では2015年から蚕・シルクの研究を継続。県内企業や関係機関の協力を得て、今年度は廃棄されてきたキャベツの芯を凍結乾燥して粉末にしたパウダーを人工飼料に配合。実験を重ねて「繭の重量が増し大きくなる理由に、キャベツパウダーに含まれるグルタミンとグリシンが関与していることがわかった」と阿部理瑛さん。
また県産の新蚕種「なつこ」に、こんにゃくとび粉を配合した飼料を与えると、生糸の強度が増すこともわかった。とび粉はセリシンに関係するらしい。繭から生糸にするための上州座繰り機、強度を測定する引張機などは先輩が自作したものを引き継いでいる。
得意なところをそれぞれ生かして
一時は理科室内が蚕でいっぱいになったと笑う部員たち。「虫は大嫌い。でも蚕はかわいくて触れるようになりました」と石井園乃さん。雌雄の見分けにも習熟した。出席率トップの星野華那斗さんは「餌にアミノ酸を少量溶かすのに工夫し、データをパソコンに打ち込みました」。嵯峨部長は「みんなが得意なところを生かして頑張りました。楽しくでき、達成感でいっぱいです」と話す。
今後に向けては「地元のもので創薬や昆虫食などの分野にも貢献できるアイデアが出せたら。絹産業の復興にも寄与できたらいい」と志向。広井顧問は「新型コロナウイルス禍の制限で大変だったが、成果が出せた。さらに後輩につなげて、常に挑戦していってほしい」と生徒たちをたたえた。