【寄稿】走太朗からの贈りもの ジィの「侍ジャパン U12」観戦記&旅日記《4》
11月27日(水)。この日は14時試合開始。午前はホテル近くの松山城へ。標高132mにある勝山山頂に本丸がある城なので、年寄りの私たちはロープウェイに乗って登城しました。その雄大な姿は圧倒的な迫力をもって私たちの前に現れました。城からの眺望は、遠く瀬戸内海や松山平野を見渡すことができます。
加藤義明から始まり蒲生家~松平家(4代)とつづいた城主たちは、天守閣からこの広大な領地を見ながら、「大将」としての自分の権力に満足したんでしょうな。そんな気持ちになってもなんの不思議もないほど、立派なお城でした。天守閣観覧をふくむ観光には1時間30分もかかるということで、私たちは本丸広場まで見て退城しました。
⚾11月27日(水)
さあ、いよいよ各グループ1、2位が対戦する決戦が始まります。Aグループ首位の日本は、Bグループ首位の韓国との第1戦。勝てば決勝進出が近づく大一番。日本の先発は、私が今大会いちばん安定した投球をしていると見ていた福田くん。球速110㎞台中盤から後半のストレートとカーブを織りまぜ、緩急を駆使した投球で韓国打線を3回2安打無失点に抑えました。
一方、打線は韓国先発のチャンくんが、身長175㎝の長身から投げ下ろす120㎞前後のストレートと変化球のコンビネーションに苦戦。「1番セカンド」で出場した走太朗も第1打席は三振。3回、2アウト1塁の第2打席はショート内野安打で出塁。その後、2アウト満塁まで追い詰めました。
今やかの三つのベースに人満ちて そぞろに胸のうちさわぐかな 子規
… が、先制点ならず。緊迫したゲームが続きました。この頃から小雨が降り始め、試合が中断するほどの強い雨になりました。30分ほどのこの雨が、日本が押し気味の試合の流れを変えてしまったのです。
5回裏。2アウト後、連打と失策で2点を先制されてしまいました。試合は「6回」まで。最終回、先頭打者の走太朗は三振。あとの打者も三塁ゴロ、三振に抑えられゲームセット。韓国に9三振、3安打、2対0で完封負けを喫しました。
敗因はいくつかありますが、特に韓国投手陣に好投手がそろっていたことが挙げられます。
日本はこれまでの試合で「走ればセーフ」の盗塁を2度失敗、けん制球によるアウトが1回など、日本の走力を韓国が徹底的にマークしてきたのです。特に2塁に走者がいるケースは、投手の投球前にショートとセカンドが2塁ベースのすぐ近くまで寄り、走者の離塁を最小限にしていたことが目立ちました。これほど極端な守備位置をとると、一・二塁間あるいは三・遊間は大きく空き、ライト前・レフト前ヒットを狙えるのですが、投手がいいので簡単に打てません。打たれたとしても、浅めに守るレフト(あるいはライト)は2塁走者を三塁でストップさせることも、ホームでアウトにすることもできるのです。よく研究された守備網に、日本の得意技が完全に抑えられました。
雨による中断も大きかったと思います。野球に限らず、スポーツは試合の流れが勝敗を左右すると言われます。本当にその通りです。これで韓国の決勝進出が決まり、日本は次の台湾戦に勝たなければ、決勝へは進めないことになりました。
この日の走太朗は、三振、遊内安、三振。打率 .333 出塁率 .333 。守備はフライ3つを処理。この試合まで、4試合失策0。
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あっ、そうそう。例の「応援」の件。日本の応援は韓国に負けませんでした。でもネ、私の提案した応援歌は「ノーヒット・ノーラン」。皆無。別に … いいけどサ …。
⚾11月28日(木)
小雨が降る朝。松山駅から歩いて10分ほどの「子規堂」へ。
正岡家の菩提寺である正宗寺(しょうじゅうじ)境内にあり、子規が17歳まで暮らした家を復元したもの。入場料50円! 堂内には子規の直筆原稿や遺品などが展示されています。小さな勉強部屋や愛用した机も置かれていました。
私の父は自分の句集を2冊自費出版するほど俳句に打ち込んでいたので、『子規全集(講談社、全22巻別巻3)』がわが家にあります。私はテレビで「坂の上の雲」を見て、香川照之演じる子規に感動し、全集の一部を読んだことがありました。
父は何度か、群馬県以外の都道府県で行われた句会に参加するために、母と一緒に出かけたのはおぼえているのですが、どこに行ったかは記憶にありません。全集があるくらいですから、松山に来て子規堂を見た可能性もあります。「おまえもやっと子規に会えたか。俳句、つくってみな」… なんて微笑みながら、天上で言っているかもしれませんネ。
見学中に長男の嫁さんから電話。きょうの台湾戦は坊ちゃん球場ではなく、今治の球場で12時から行うとか。さあ大変。大急ぎで松山駅に戻り、普通列車だと1時間20分、特急列車で行けば35分だというので、特急「しおかぜ」に乗り、一路今治へ。雨のおかげで、また初めての土地に行くことができることになりました。
さあ、決勝戦進出には勝たなければならない大一番。相手は台湾。グループリーグでは韓国に0-1で敗れたものの、大接戦を演じた相手。日本も韓国戦の反省を生かして、実力を十分に発揮してもらいたい一戦です。
(つづく)
(文=走太朗のジィこと峰岸克樹)