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独自教育ビジョン「S.P.A.R.K.(スパーク)」で動き出す桐商の未来ー星野校長に聞く(下)

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独自教育ビジョン「S.P.A.R.K.(スパーク)」で動き出す桐商の未来ー星野校長に聞く(下)

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2025.05.19 
tags:S.P.A.R.K., S.P.A.R.K. 桐商, SAH, SAH 前橋南, 桐商 スパーク, 桐生商業, 桐生市立商業高校, 非認知能力

 2025年4月に桐生市立商業高校に着任した星野亨校長が打ち出した新構想「S.P.A.R.K. for our well-being!」。生徒一人ひとりが自ら考え、行動し、社会に能動的に関わっていく力を育むための桐商独自の教育ビジョンだ。星野校長はこれまでの教職経験を踏まえて新たなビジョンを桐商に根づかせ、生徒一人ひとりの心に火をつけようと動き出した。(2回中の2)

(役職が混在するため、敬称略で記事を構成します)

(上)を読む

 

開校記念式典での校長エージェンシーに全校生徒の拍手

 桐商への異動が決まった春。星野の頭の中にはSAHがあった。しかし、SAHは県立学校の取り組みで桐商は「市立学校」だ。学校運営者の違いが壁として立ちはだかった。

 「だったら桐商独自の事業として取り組もう」と動き出した。これが「S.P.A.R.K. 構想」だ。OECDのラーニングコンパス2030や群馬県教育ビジョン、SAH事業などを参考に桐商の教育ビジョンをつくりあげた。桐商には定時制もあるため、この構想は全日制、定時制共通の取り組みとして全校あげて行うものとなった。

【写真】桐商独自の教育ビジョンについて説明する星野亨校長(同校体育館で)(25年5月3日付・桐生タイムス紙面)

 今年4月末に行われた桐商の開校記念式典。式典終了後、モーニング姿の星野は壇上から下り、生徒と同じ目線に立って「S.P.A.R.K.」の思いについて語り出した。

「物事はうまくいかないことの方が多いけど、対話とか工夫とかで何回も何回もチャレンジして、前より良くなったっていう積み重ねが大事。失敗はつきものだからへこまずに、違うルートを探ったり、違うやり方を探ったりしながら取り組んでほしい」とエージェンシーとレジリエンスの重要性を力説した。

 生徒の動きを促すために、まず星野自身が「校長エージェンシー」を発揮することを宣言し、その一つとして携帯電話の運用ルールの見直しについて語った。授業中に携帯電話の着信音が鳴ってしまっただけでも、保護者が学校まで来なければ返却しないというルール。星野はそのルールに強い違和感を抱いていた。

 「今や携帯電話やスマホは当たり前に存在する時代。たとえば放課後や下校中にトラブルに巻き込まれたとき、携帯があれば助けを呼べたかもしれない。でも、その携帯が学校に預けられていたらどうでしょう。学校が逆に生徒の命や安全を阻害してしまうことにもなりかねないと感じました」と星野校長は語る。

 全校生徒の前に「保護者が学校に呼び出されるというのは、それ相応の理由がある場合でなければならないと思います。仕事をしている保護者がすぐに駆けつけられるとは限らないし、そこまでしないと反省できないみなさんですか」と投げかけた。そして、このルールの見直しは校長として変えることができると宣言した。

 星野が語った後、会場にいた全校生徒から自然と大きな拍手が湧き起こった。

 

生徒は自分のいる場所をよくしたいと思う仲間であり、同僚

 「S.P.A.R.K.」の種まきは終え、今はシャワーを浴びせている段階だ。PTAの会合でも話し、全日制の生徒会とはランチミーティングの機会を設けたりして、浸透を図っている。

「今のところ、まだ誤解している生徒もいて、校長に訴えると変えてくれるという受け止め方をされている部分もあります」と星野は笑う。

 先日も整髪料を付けることを認めてほしいとやってきた生徒に対し、「じゃあ、生徒でプロジェクトチームを作って企業などにヒアリングしたり、リサーチして、それをプレゼンしてみたら」と切り返した。

 5月14日には定時制の生徒会のメンバーに授業の始まる1時間前に登校してもらい、校長室でディスカッションを行った。「彼らの熱意に涙が出るほど感激しました」と星野は話す。

【写真】星野校長らと意見交換する桐商定時制の生徒会役員(同校で)(25年5月17日付・桐生タイムス紙面)


 桐商の生徒たちは意欲的で前向きな子が多い。だからこそ、〝スパーク〟すると星野は確信している。

「生徒も教員も学校という同じ環境で生活しており、どちらも『自分のいる場所をよくしたい』と考えている同志です。立場こそ異なりますが、その点においては完全に同じ気持ちのはずです。だから(生徒は)対話したり、協働したり、サポートしあったりする仲間、同僚だと私は思っています。行動してムーブメントを起こせる子が社会を変える力になる。そういう裾野をひろげていきたいですね」

 「S.P.A.R.K.」が桐商の新しい文化として根を張り、芽吹き、成長していく。その未来に向けた取り組みは生徒たち一人ひとりに胎動しはじめている。

(編集部)

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編集部より 記事は配信日時点での情報です。

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