ホーム

»

学校ニュース

»

【特別寄稿】「スマートフォンの使用が子どもの学力に与える影響」①ー東北大・榊助教に聞く

学校ニュース

一覧はこちら

【特別寄稿】「スマートフォンの使用が子どもの学力に与える影響」①ー東北大・榊助教に聞く

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2025.07.14 
tags:スマホ, スマホ 中毒, スマホ 依存, スマホ 勉強, 川島隆太, 東北大学加齢医学研究所 川島隆太, 榊 浩平

 子どもたちの学習に欠かせないスマホやタブレット。一方で、その使いすぎが学力に与える影響も見逃せません。東北大学 応用認知神経科学センター助教の榊浩平先生にアドバイスを伺いました。(3回に分けて掲載します)

※本記事はタブロイド判「みんなの学校新聞(25年7月号)」に掲載した記事を転載しています。

 

はじめに

 2024年度のこども家庭庁の調査結果によると、中学生の98.1%がインターネットを使用し、82.0%がスマートフォン(以下、スマホ)を使用しています1)。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」により、すべての小中学生にタブレットなど1人1台の学習者用端末が行き届きました。たしかにスマホ等のデジタル機器は便利であり、デジタルの活用で私たちの生活は豊かなものになったように思えます。一方、デジタルの活用で私たち人間は幸せになったといえるでしょうか。インターネットは便利な道具である反面、長時間使用による依存症状が問題視されています2)。先行研究においても、インターネットの使用と学業成績の低さ3)、抑うつや不安の傾向の高さ4)などとの関係が指摘されています。スマホ等を用いたインターネットの使用は、子どもの学力にどのような影響を与えるでしょうか。

 

スマホ使用と学力の関係

 東北大学加齢医学研究所は宮城県仙台市教育委員会と共同で、2010年度より毎年、約7万人の全仙台市立小中学生を対象とした大規模調査(「学習意欲」の科学的研究に関するプロジェクト)を実施しています。本プロジェクトでは、標準学力検査で収集した学力の指標と、同時に実施したアンケート調査で収集した学習・生活習慣に関するデータを用いて、子どもたちの学習意欲や学力と関係する学習・生活習慣を科学的に明らかにすることを目指しています。

図1のグラフは、2017年度の小学5年生〜中学3年生41,084人を対象とした、スマホ等の使用時間と成績の関係を表しています5)。グラフから、スマホ使用時間が「1時間未満」の子どもたちの成績が最も高いことが分かります。その理由として、楽しくて誘惑の多い魅力的なスマホに依存することなく、自律的に使いこなすことができている、自己管理能力の高い子どもたちが含まれているのではないかと考えています。

 そしてグラフは「1時間未満」を山の頂点として、使用時間が長くなるほど、どんどんと成績が低くなっていく様子が見てとれます。このように、1時間以上のスマホ使用が学力に悪影響を与えていることが明らかとなりました。

 


参考文献
1) こども家庭庁. (2025). 令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査報告書.
2) Young, K. S. (1998). Caught in the net: How to recognize the signs of internet addiction and a winning strategy for recovery. John Wiley& Sons.
3) Samaha, M., & Hawi, N. S. (2016). Relationships among smartphone addiction, stress, academic performance, and satisfaction with life. Computers in human behavior, 57, 321-325.
4) Becker, M. W., Alzahabi, R., & Hopwood, C. J. (2013). Media multitasking is associated with symptoms of depression and social anxiety. Cyberpsychology, behavior, and social networking, 16(2), 132-135.
5) 榊浩平, 川島隆太. (2023). スマホはどこまで脳を壊すか, 朝日新聞出版.

 

榊 浩平

 1989年千葉県生まれ。東北大学加齢医学研究所助教。2019年東北大学大学院医学系研究修了。博士(医学)。人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の開発を目指している。脳計測実験や社会調査で得られた知見をもとに、教育現場での講演、教育委員会の顧問、本の執筆などの活動をしている。現在は「スマホ依存」をテーマに、人類と科学技術が健康的に共生する方法を模索している。

●榊先生の書いた本

「最新脳科学でついに出た結論『本の読み方』で学力は決まる」(共著/青春出版社)

「スマホはどこまで脳を壊すか」(朝日新書)がある。

広告

編集部より 記事は配信日時点での情報です。

ページトップへ