【特別寄稿】「スマートフォンの使用が子どもの学力に与える影響」③(最終回)ー東北大・榊助教に聞く
子どもたちの学習に欠かせないスマホやタブレット。一方で、その使いすぎが学力に与える影響も見逃せません。東北大学 応用認知神経科学センター助教の榊浩平先生にアドバイスを伺いました。(3回に分けて掲載します)
※本記事はタブロイド判「みんなの学校新聞(25年7月号)」に掲載した記事を転載しています。
スマホの使用時間を減らせば成績アップ
現時点で長時間スマホを使ってしまっている子でも、使用時間を減らせば成績を持ち直すことができるのでしょうか。図3の左側の棒グラフは、2015年度における小学校6年生および、中学校1年生のスマホ等の使用時間と学力の関係を表しています5)。2015年度においてスマホ等を「使用していなかった」子どもたち、「1時間未満」の使用にとどめられていた子どもたち、「1時間以上」使用してしまっていた子どもたちの三つのグループに対して、それぞれ2年後のスマホ等の使用時間の変化と学力の変化を調べました。

(スマホなどの使用時間/1日)
まずは、2015年度の時点でスマホ等を「使用していなかった」または「1時間未満」使用していた子どもたちの変化を見てみましょう。右側上段と中段の線グラフをご覧ください。2年後の2017年度の時点で、そのままスマホ等を使用していない、あるいは1時間未満にとどめられている子どもたち(青色の実線と破線)の成績は伸びていました。一方で、スマホ等の使用時間が「1時間以上」になった子どもたち(赤色の実線)の成績は下がっていました。このように、スマホ等を使用しない、あるいは使用したとしても1時間未満にとどめることができている子どもたちの成績は、2年間で順調に伸びていたのです。反対に、スマホ等を1時間以上使用するようになってしまうと、学力はどんどんと下がっていってしまいました。
次に、下段の線グラフをご覧ください。こちらは、2015年度にスマホ等を「1時間以上」使用していた子どもたち(薄い灰色の棒)の変化を表しています。2年後にスマホ等を「使用しなくなった」(青色の実線)、または「1時間未満」(青色の破線)に減らすことができた子どもたちの成績は、持ち直して上昇に転じていました。一方で、そのまま「1時間以上」使い続けてしまった子どもたち(赤色の実線)の成績はさらに下がってしまいました。この結果は私たちにとって、救いといえるデータとなるかもしれません。なぜなら、一度スマホ等を1時間以上使用するようになってしまったとしても、その後で何とかして使用時間を減らすことができたら、下がってしまった成績を持ち直させることもできる可能性があるからです。
この中に、私たちがこれから取り組むべき課題が潜んでいると考えています。実は、下段の線グラフでスマホ等の使用をやめられた子どもたち(青色の実線)はたったの2.9%、1時間未満に減らせた子どもたち(青色の破線)もわずか10.1%しかいませんでした。残りの大部分、87.0%の子どもたちはそのまま1時間以上使い続けていたのです。この結果からも、やはりスマホはタバコやお酒、ギャンブルと同じように、一度ハマってしまうとなかなか抜け出すことができない依存性があるといえるでしょう。スマホをやめれば成績が上がります。しかし、スマホの「沼」から自分の力で抜け出せる子どもたちは現状で13%しかいません。そのため、いかにして87%の子どもたちを減らし、13%の子どもたちを増やすか、これこそ私たち大人が真剣に取り組んでいく必要がある、教育の課題です。
おわりに
基本的に親や学校が与えない限り、子どもたちはスマホやタブレットなどのデジタル機器を手にすることはありません。まずは与える側の大人がリスクについて正しく理解する必要があります。スマホ使用が子どもの学力に与える影響を防ぐためには、頭ごなしに叱ったり無理に規制をかけたりするのではなく、子どもたちが自らを律してスマホを上手に活用できるよう、自己管理能力を育てていくことが有効です。そして、大切な子どもたちを守るため、家庭・学校・地域が連携しながら一体となって取り組みを進めていくことが求められます。
参考文献
1) こども家庭庁. (2025). 令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査報告書.
2) Young, K. S. (1998). Caught in the net: How to recognize the signs of internet addiction and a winning strategy for recovery. John Wiley& Sons.
3) Samaha, M., & Hawi, N. S. (2016). Relationships among smartphone addiction, stress, academic performance, and satisfaction with life. Computers in human behavior, 57, 321-325.
4) Becker, M. W., Alzahabi, R., & Hopwood, C. J. (2013). Media multitasking is associated with symptoms of depression and social anxiety. Cyberpsychology, behavior, and social networking, 16(2), 132-135.
5) 榊浩平, 川島隆太. (2023). スマホはどこまで脳を壊すか, 朝日新聞出版.

榊 浩平
1989年千葉県生まれ。東北大学加齢医学研究所助教。2019年東北大学大学院医学系研究修了。博士(医学)。人間の「生きる力」を育てる脳科学的な教育法の開発を目指している。脳計測実験や社会調査で得られた知見をもとに、教育現場での講演、教育委員会の顧問、本の執筆などの活動をしている。現在は「スマホ依存」をテーマに、人類と科学技術が健康的に共生する方法を模索している。
●榊先生の書いた本
「最新脳科学でついに出た結論『本の読み方』で学力は決まる」(共著/青春出版社)
「スマホはどこまで脳を壊すか」(朝日新書)がある。
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