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【連載】太田中入試から「男女別枠」を考える❶

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【連載】太田中入試から「男女別枠」を考える❶

中学入試

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2021.11.03 
tags:ジェンダー平等 入試, 中央中等教育学校, 四ツ葉学園中等教育学校, 市立太田中 入試, 市立太田中 男女別枠, 男女別枠 入試, 群馬県教育委員会, 都立入試 男女別枠

2022年度入試から男女別枠の募集に変更される中高一貫の市立太田中学校

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 2022年度の入試から市立太田中学校の選抜の募集方式が男女別枠に変更される。この変更をめぐっては一部の太田市議などから、見直しを求める声があがっていたが、同校は定員を男子51名、女子51名とする入試に踏み切った。

 ジェンダー平等の流れもあいまって、高校入試などでは男女一括募集が主流になる中、男女別枠入試に変更した深層を探った。

 

■来年度からは公立中高一貫校3校とも男女別枠の募集に

 現在、群馬県内には公立の中高一貫校が3校(連携型中高一貫校は除く)ある。県立中央中等教育学校、伊勢崎市立四ツ葉学園中等教育学校、太田市立太田中学校・高等学校だ。

 このうち、中央中等と四ツ葉学園は開校当初から入学試験での募集方式を男女別枠で行ってきた。

 男女別枠で同数の方式を採用している理由を県教委高校教育課では「小6段階ではその発達の度合いに男女の性差があり、一般的に女子の方が成長が早い傾向があります。心身ともに発達の著しい中学生段階ではなるべく男女同数の環境が望ましいという考えから、別枠での募集にしている面があります」と説明する。

 中央中等教育学校の田島公基校長も「社会性が大きく向上する中学生・高校生の年齢においては、男女のバランスがよい環境下で学校生活を送ることが望ましいと思われます」と男女同数であることが及ぼす学校運営上のメリットを強調する。

 入試が別枠の募集であれば、男女の人数比の極端な偏りは回避できる。

 

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 男女別枠か同枠かについて、受験を経験した保護者はどう受け止めているのか。

 東毛地区に在住するAさん(男性)は現在、長男と長女が四ツ葉学園に通っている。同校の入試では、例年女子の方が志願者が多く、倍率が高くなる傾向がある。

 「親のエゴとして、自分の子どもの受験にとって倍率が低くなる方が望ましく、子どもの性別によって考えが変わりますね」と複雑な思いを語る。

 Aさんは、学校運営上、男女別枠を設けることはやむを得ないとする考えに理解を示しつつも、「息子の時は別枠でホッとしましたし、娘の時は同枠であってほしいと思いました」と本音を漏らした。

 

■小6段階での男女の学力差

 公立中で教師経験のある50代のBさん(女性)は「心身ともに女子の方が小6、中1くらいの年齢は男子に比べ発達していて、男子は3年かけて追いついていくような感じです。学力的にも中1の頃は女子が上位を占める割合が多い傾向にあります」と現場での実感を話す。

 伊勢崎市内の塾関係者も実際の成績データを元にこう説明する。

 「たとえば、中1の最初の定期テストでよくあるケースですが、総合で20位だとして、男女別の順位が男子で3位なんてこともよくあります。学力差がなければ、男女別で10位くらいになるはずですから、上位を女子が占めるということが中1ぐらいだと少なくないですね。これが学年が上がるにつれて、バランスが取れていくことが多い印象です」。

 

 この男女の成績の偏りは実際の入試結果にも表れている。

 太田市議の水野正己氏は今回の太田中の制度変更に反対する一人だ。水野氏のブログによれば、「同校の入試での直近3年間の男女別の平均得点は、2019年度が男子300.9点、女子315.9点、20年度が男子300.5点、女子318.7点、21年度が男子326.2点、女子330.3点」で推移しているという。

 「来年度から男女別の定員を導入すれば、男子より得点が高いのに不合格となる女子が生まれることになります。女子であることで男子より得点が高いのに不合格としてしまうのは、どう考えてもジェンダー平等に逆行します」と市教委の対応を批判する。

 太田中の二宮一浩教頭は「(いままでの男女同数の選抜方法においては)、女子の方が若干多い傾向が続いていた」と男女の人数に偏りがあったことを認める。

 

 

■高校入試は男女別枠全廃の流れ

 高校入試ではジェンダー平等の観点などから、男女別枠方式から一括方式に切り替える流れが進んでいる。群馬県内でも前橋南高校が昨年度から男女別枠入試を男女一括方式に切り替え、公立の共学校はすべて男女一括での募集方式になった。現在、全国でこの制度を残しているのは都立高入試のみだ。

 都立高入試での男女別枠定員は1950年に導入され、現在は普通科110校で定員が男女別になっている。しかし、この制度は性別によって合格ラインが異なるため、専門家などの間から男女平等の観点から撤廃を求める声があがっていた。

 朝日新聞によれば、98年度からは定員の9割までを男女別の成績順で決め、残り1割を男女合同の成績順で決める「緩和措置」が導入され、2021年度入試では42校がこの措置を採用したという。とはいうものの制度自体は温存されたままだ。

 県教委高校教育課改革推進係の担当者は「(群馬県の公立高入試で)男女別枠方式を撤廃したのは、ジェンダー平等の社会的な背景に加え、中3段階であればある程度、男女の能力的な差が縮まってくる点も考慮に入れている」と説明する。

 

 こうした流れの中で男女別枠で入試を行えば、時代に逆行していると批判があがることはある程度、想定の範囲内といえる。にもかかわらず、太田中が男女別枠入試に舵を切ったのは、別の事情があるのではないかと推測する声もある。〈つづく 〉

(編集部=峯岸 武司)

 

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