PBL教育、その狙いは【下】 群馬大学理工学部長石間経章さんに聞く
群馬大学理工学部の2年生470人が小グループに分かれ、企業に出向き、現場で課題解決能力を磨くPBL教育だが、理工学部長の石間経章さんは「取り組みを継続することで企業と大学とのつながりが深まり、桐生のまち全体で学生を育てようという意識が市民の間に醸成されれば、地域も大学もきっとおもしろくなる」と、近未来図を描いてみせる。このまちと大学の持続可能性にもつながる、大切な視点である。
【写真】群馬大学理工学部 石間経章学部長
■現場を見て 対話して
―どんな企業に協力要請している?
石間 業種や事業所の規模などにこだわりはない。「うちには大学生に教えるスキルがない」と言われることもあるが、私たちが企業に求めるのはそれだけではない。それぞれの企業には、社員の生活を支えるだけの技術があり、経営理念がある。普段の仕事ぶりを見せてもらうことが、学生にとっての学びとなり気づきにつながる。そこに学生との対話を少しだけ加えてもらうだけでも十分だと思う。数人の小グループで3日間ならば、負担も軽いのではないか。
―企業側の利点は?
石間 何より学生が地元企業を知るきっかけになる。学生に対し企業が何を伝えるのか、どんな対応をするのか、そこは企業側にお任せしたい。例え
ば自分の会社の魅力はどこで、何が足りないのか、学生との対話から探ってもらってもいいし、抱えている具体的な課題を学生に預けてみるのも一案。いずれ大学との共同研究のような形に発展すれば、それもおもしろい。
地元企業が学生に寄せる期待に、学生自身は気づきにくい。いずれ就職を考えるとき、大手企業で大勢の仲間と働くという選択だけでなく、技術のある中小企業で自分を生かす道もあるのだと思い出す学生がいれば、その企業だけでなく、地域の将来にとってもプラスになるはずだ。
■まち全体で学生を育てて
―従来の課題解決型教育との違いは?
石間 地元企業での実体験が何より大きい。「地域で学生を育てる」という考え方は古くて新しいものだと思う。私が学生だった頃は、経験を積んだ大人と交わる機会が今よりも多かった。地域の側にも学生を見守ろうという雰囲気があった。桐生くらいのまちの規模ならば、学生が移動するにもちょうどいいし、事業所も多いので470人を受け入れるだけの「器」はあると、私は思っている。
―協力できる企業や事業所はどうすれば?
石間 群馬大学理工学部(担当・楯、電0277・30・1003、ファクス30・1041、メールm-tate@jimu.gunma-u.ac.jp)に問い合わせてほしい。桐生市や桐生商工会議所、北関東産官学研究会に問い合わせていただいても対応可能なはず。2月下旬には参加企業向けにオンライン説明会を開催する予定だ。