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【塾の先生コラム】「教師」と『先生』❶(桐生進学教室)

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【塾の先生コラム】「教師」と『先生』❶(桐生進学教室)

オピニオン

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2022.05.20 
tags:なぜ名札をつけなければいけない?, 名札, 塾の先生コラム, 桐生進学教室

| 「名札問題」を提起した自分に校長先生は・・・

 中学生の頃(から?)私は<生意気な少年>で、学校の先生たちに対しては「○○さん」という呼称を使っていました。

「あの人たちは職業として中学校の教師をしているだけだろう。僕は尊敬できる人でなければ『先生』というコトバは使いたくないね」などと同級生たちに語っていました。

 その同級生たちは“ハゲ”だの“カッパ”だのといったあだ名で呼んでいましたから、それに比べて多少は「敬意の念」を表していたつもりです。でも、有難いことに当時の中学校には『先生』と呼べる方が何人もいました。少なくとも担任の先生ふたりと英語の先生ひとりと校長先生ひとりは紛れもなく『先生』でした。

 

 当時私が通っていた公立中学校では「月曜日の朝礼の時に名札を付けていない=名札を忘れた生徒は朝礼の後に校庭を2周走らなければならない」というルールがありました。私は何回かの校庭2周を経験した後で学びました。<そうだ、名札をもうひとつ買って学校の机の中に置いておけばイイだけのことじゃないか>と。

 ところが、中学3年生の一学期のある月曜日の朝礼の後、とてもまじめで身体の弱そうな女子がたまたま名札を忘れて他の生徒たちと一緒に(でも一人集団から遅れながら)一生懸命に校庭を走っている姿を見てカチンと来ました。

 数日後に開かれた「中央委員会」(生徒会とは別に各クラスの学級委員と副委員および各クラスの担任の先生たちとで話し合う会合)のときに、私は議題として提出しました。「なぜ名札を忘れたら校庭を走らなければならないのか。それ以前になぜ生徒だけが名札を付けなければならないのか」と。前者はすぐに解決しましたが、後者の議題は紛糾しました。

 

先生:たとえば生徒に声を掛けるとき、名前がわからないと「そこの君!」と声を掛けてもそれが誰をさしているのかわからないし、その子に対しても失礼ではないか。名札があれば「そこの○○君!」とちゃんと名前で呼びかけられるだろう。生徒はたくさんいるわけだし、全員の名前を覚えておくなんてことは無理だからね。

少年:それはおかしいですよね。名札は前の胸のところに下がっています。声を掛ける時にいちいちその生徒の前まで来て名前を確認してから「そこの○○君!」ってやるんですか。それともこれからは名札を背中に大きくゼッケンのように書かなければならないんですか、遠くからでも呼び止められるように。

先生:いやいや丹羽君、それはものの例えのひとつで、名札が付いていれば普段すれ違ったときに「ああこの子の名前は○○なんだな」って頭に入れることもできるじゃないか。

少年:全校生徒の名前を覚えておくことは教師としての職務だと思います。それに、職員室にも何人もの先生方がいらっしゃいますよね。顔はわかるけど名前のわからない先生に声を掛けたいときに「先生!」って言ったら全員がこっちを向いてしまうではないですか。あ、先生方は机に座っていますから、名札は頭の上にピョコンって立つように付けるっていうのはいかがですか。

先生:丹羽君、そういうのを「屁理屈」というのだよ。

少年:先生こそ、ちゃんとした説明になってないじゃないですか。生徒を教え導く立場としてはしっかりと説明する義務が・・・。

・・・という押し問答が数分間続いていました・・・・

 そこに“騒ぎ”を聞きつけた校長先生が入って来られました。

校長丹羽君の言っていることは確かに一理ある。でも先生たちには先生たちの事情というものがあってね。ここはひとつ私に預けてくれないかね。

少年:はい。わかりました。

 翌日から校長先生だけは生徒と全く同じ名札をご自分の胸の前に下げていました。月曜日の朝礼の時だけでなく学校にいるときには常に。そういえばこの校長先生は私たちが授業を受けているときに教室の窓の下で草むしりをしていたこともありました。もちろん生徒の名前は全部頭に入っていたと思います。

(つづく)

※ このコラムは3回連載を予定しています。

 

プロフィール

丹羽塾長

<現職>

桐生進学教室 塾長

 

<経歴>

群馬県立桐生高等学校 卒業

早稲田大学第一文学部 卒業

全国フランチャイズ学習塾 講師

都内家庭教師派遣センター 講師

首都圏個人経営総合学習塾 講師

首都圏個人経営総合学習塾 主任

首都圏大手進学塾    学年主任

都内個人経営総合学習塾 専任講師

 

 

 

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