【塾の先生コラム】「前期試験制度」の『問題点』❸(桐生進学教室)
|第3章 「スポーツも学力も同等? の教育」
それではなぜそこまでして公立高校(私立高校ならまだしも)が「スポーツ選手の青田買い」にこだわるのかについて考察(邪推?)してみます。
「Wikipedia」で<国民体育大会>を検索すると下段の方に「批判と問題」という項目で以下のような記述にたどり着きます。
開催都道府県の勝利至上主義
1964年の新潟国体以降、開催都道府県が総合優勝杯である天皇杯・皇后杯を獲得することがほぼ常態化している。これは開催県の代表が予選結果に関係なく全種目に出場できるいわゆる「フルエントリー制」の存在や、開催県が選手強化や大会運営、会場とする施設の新設に資金を注ぎ込んでいることもある。選手強化に当たっては、開催都道府県が地元以外の有力選手を県職員や学校教員、教育委員会職員として積極採用する(このことが、アマチュア選手にとっても「渡りに船」である)という状況が指摘されていることもある。
(中略)
このような慣例に対して、2002年のよさこい高知国体では橋本大二郎県知事(当時)がこうした慣例を廃した結果、開催県の高知県は10位にとどまり、男女ともに東京都が優勝した。
(下線および太字は筆者による)
「スポーツ庁」は文部科学省の外局であることからも分かるように、「スポーツ」と「教育=学力?」は根っこのところでは繋がっています。いや、上記下線部から推測する限りではむしろ「スポーツ」が「教育」を牛耳っているとも言えそうです。そういえば桐生・みどり地区の中学校の校長先生は元体育教師が多いと感じているのは私だけでしょうか?
事実、現行の「前期」『後期』試験もそうですし、改善案の新しい選抜制度でも同様に、まず「前期」で残りを『後期』という順番にもこの序列が現れているような気がします。
最初に、全ての受検者を対象に、「特色型」の観点で第1段階選抜を行い・・・
次に、「特色型」の合格者を除いた受検者を対象に、「総合型」の観点で第2段階選抜を行い、・・・残り・・・の合格を決定する。
「語るに落ちた」とはまさにこのことです。群馬において、「学力」は二の次・三の次なのだと思わざるを得ません。
僭越ながら私の<対案>を紹介します。
県内の進学校に於いては、最初に学力試験で一定数の合格者を決定した後で、スポーツや学校活動などの実績を考慮に入れつつ該当高校で学ぶにふさわしい学力を有しているかどうかを総合的に判断して合格者を決定する。
しかし、これまでの流れの中で考えてくると、サッカーやバスケが得意な生徒であれば数学や英語がそこまで得意ではなくても「進学校」である前高や高高に合格できる権利を、数学や英語が得意で運動があまり得意ではない生徒とまったく同等に持っていても(むしろ優先的に持っていても)何ら不思議ではないことになります。
これまでに桐生では年度は異なりますが(当たり前に県大会に出場した年度が異なるからです)川内中学・清流中学・桜木中学それぞれのサッカー部の生徒が何人も(多いときは6人も)いっぺんに前期で前高に合格しています。あの、県内有数の「進学校」である「マエタカ」にです。県大会に出場できるほどに真剣に日々の練習に時間を割いていて、なおかつ「学業も優秀」とは、いくらなんでも『文武両道』の優れた生徒が一つの学校で一つの部活動に集中するとは考えづらいので、この合格には「何らかの優先順位」が働いたものと考えざるをえません。
「桐生は“球都”って言われているだろう、それと同じように前橋は昔から“蹴都”(シュウト=サッカーの都)って呼ばれているんだよ」と、前橋在住の知人から教わったことがあります。確かに桐生市は昔からだけではなく、今も、これからも“球都”と呼ばれて行くでしょう。それが桐生市(長)の方針でもあり、社会人野球の最強軍団である<桐生市役所野球部>が存在する限りは、この伝統は消えることがないのですから。
一方の前橋にも確かに<前橋育英高校>と<前橋商業高校>というサッカー強豪校が存在していますので、知人の発言もあながち根拠が無いわけでもありません。(ガンバレ、桐生第一高校サッカー部!)
ところで、現在の桐生市長さんは桐高硬式野球部で甲子園を目指して猛練習の日々を過ごしながらもあの名門・青山学院大学に進学された『文武両道』の方ですし、前高のサッカー部の指導者(笠原宗太先生)もサッカーの名門・前橋商業高校から筑波大学に推薦で進学し、さらにプロとして「Jリーグ」で活躍した後で現在の高校の教師となった、やはり『文武両道』の立派な方です。(お二人の経歴は新聞やWikipediaなどで公表・公開されています)
最後に、私立高校が開催した「塾長対象説明会」での担当職員のコトバを紹介します。
「もし先生方の塾生さんで、◇◇高校で部活動を頑張って関東大会や全国大会を目指したいっていう生徒さんがいらっしゃいましたら是非ウチの高校を推薦してください。なお、その場合にはその塾生さんには『部活の顧問の先生に相談しなさい』とだけ伝えて、塾長先生方はそれ以降は絶対に関わらないようにしてください。<ヤケド>をしますので。」
『火傷』って・・・。「スポーツの世界」って、いったいどんな世界なのでしょうね。任侠の世界でも少しは仁義を重んじるとは聞いているのですが・・・。
そういえば塾の『面談』でこのような相談を保護者の方から受けたことがあります。
「ウチの子は県外の高校で今の部活を続けたいって言っているのですが、群馬県の“協会”の方から横槍が入って来ましてね。優秀な選手の県外流出は認められないって言うんですよ。どうしたらいいでしょうかね」
私はヤケドをしたくなかったので、「ウチは進学塾なので学力に関する相談は受けますが、そういうコトについては何もコメントができません」と答えました。
また、桐生タイムス社の「覆面座談会」での保護者Aさんの言葉も忘れられません。
「ウチの子は高校では運動のできないカラダになってしまったんですよ、勝つための猛練習で体を痛めてしまってね。中3の夏の中体連のときにはもうボロボロになってしまっていたんですけど、監督がチームメートのB君をどうしても『運動留学』させたくてね。ウチの子は主力メンバーの一人だったんで、出ないと勝てないワケですよ。だから・・・、監督の命令で・・・、体に鞭打って・・・、最後まで頑張って・・・」
この「監督」は中学の時からこの運動の有力選手で、桐生工業高校からどこかの体育会系の部活の強豪大学に推薦入学で入って、その後は公立中学校の体育教師として勤務する傍らで「部活動の指導者」として名を馳せて、その実績を引っさげて定年退職後は高校の部活の指導者としてさらに飛躍を遂げていました。この運動種目では群馬では知らない人がいない「帝王」とも呼ばれているこの人間は、チームや有力選手やそして自分自身の“勝利”のために、いったい何人の「セイト」を“ギセイ”にしてきたのでしょうね。心が痛みます。
さらに、危ないコトを1つ置き土産にします。
別の機会に別の方に勇気を出して訊いたことがあります。
「まさか、スポーツ推薦って、◇◇が動くとか・・・ないよね。」
相手の方(この業界に詳しい方)は重い表情のまま黙っていました。
聞くところに拠ると10月1日が「部活推薦」の解禁日なのだそうです。
皆さんも、聞き耳を立てたりしてぜひ“歴史の真実”の証人のひとりになってください。そして「前期試験の結果」も、どういう子が合格したのかを気にしてみてください。たとえご自分のお子さんが前期試験で不合格になったとしても落ち込まずに勇気を奮って“真実”と向き合ってみてください。しっかり『学力』さえ身につけていればたとえ前期の残りの<狭き門>だとしても必ずや『後期試験』で合格するハズですので。
追記です。「群馬県公立高校入学者選抜制度の改善方針」について にはこのような記述もあります。
4 その他
- 今後は、中学校、高校の関係者の意見等を聞きながら、本検査及び追検査の日程や、具体的な選抜実施方法等について、引き続き検討する。
- 新しい入学者選抜制度の円滑な実施に向け、検討内容に関する決定事項については、中学生、保護者及び県民等に、適時に広く周知する。
群馬の「教育」が、真に『民主主義』であることを心から願いつつ、筆を置きます。
短い期間ではありましたが拙い文章にお付き合いくださり真にありがとうございました。 (つづく)
プロフィール
丹羽塾長
<現職>
桐生進学教室 塾長
<経歴>
群馬県立桐生高等学校 卒業
早稲田大学第一文学部 卒業
全国フランチャイズ学習塾 講師
都内家庭教師派遣センター 講師
首都圏個人経営総合学習塾 講師
首都圏個人経営総合学習塾 主任
首都圏大手進学塾 学年主任
都内個人経営総合学習塾 専任講師