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ぐんまの私立通信制高校事情

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ぐんまの私立通信制高校事情

教育全般

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2024.04.10 
tags:わせがく高校, 文部科学省 不登校, 文部科学省 私立 通信制, 群馬 不登校, 群馬 私立 通信制, 群馬 通信制高校

群馬県私立通信制高校等連絡協議会事務局の丸山昌利氏(わせがく高校・教頭)

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 22年度の小・中学校における不登校児童生徒数は約29万人(文部科学省調べ)で過去最多を記録した。群馬県内でも小学校では10年連続増加、中学校では9年連続増加となっている。不登校の児童・生徒の増加を背景に私立の通信制高校の開校が相次いでいるが、不適切な指導が横行しているとの指摘もあり、昨年11月、文科省は私立通信制高校の認可基準を再整備し、全国の自治体に通知した。
 群馬県内の私立の通信制高校の現状について、群馬県私立通信制高校等連絡協議会事務局の丸山昌利氏(わせがく高校教頭)に聞いた。

 

「通信制高校」の歴史と現状

 そもそも通信制という形態は1955年(昭和30年)に勤労学生に向けて高校卒業資格を得られる制度とされた背景を持つ。公立の通信制高校は働きながら学ぶことに力点が置かれ、学費が安いのが特色だ。群馬県内では公立の通信制高校は4校(高崎高、桐生高、前橋清陵高、太田フレックス高)ある。
 一方、私立の通信制高校は公立がやらない領域をやろうというスタンスで設立された。80年代以降中退者や不登校生徒を受け入れ、彼らに対して手厚く学習支援を行い、卒業後の進路の指導についてもしっかり面倒をみることに力点を置く。
 文部科学省によると、23年5月時点で私立の通信制高校に通学する生徒は全国に約20万人。03年に株式会社による学校運営が認められたことと、全国的な不登校の増加を背景に着実に拠点数、生徒数を伸ばしている。群馬県内の私立の通信制高校は18校約40拠点ある。生徒数は22年に初めて1,000人を超え、1,177人(前年35%増)となった。
 「最近では学び方が多様化していて、最初から通信制を選ぶ生徒も増えてきています。特にコロナ禍前後でオンライン学習が普及したことで、学校に通わなくても学べるスタイルが認知されました。その結果、今まで来ていなかったような生徒も入学するようになりました。大学受験のために有効に時間を使いたいという理由で通っている子もいます」(丸山氏)

 

 「全日制」「定時制」(昼間定時制含む)という形態は出席日数が重視される。卒業までに必要な単位は74単位以上。定時制の場合、1年で19単位を修得していくため、卒業までに4年かかってしまう。中には太田フレックス高校のように、3部制の学校であれば、他部の教科を履修することにより、3年で卒業を目指すこともできる学校もある。
 これに対して、「通信制」は、①授業に出席する代わりに家庭などでレポートという学習課題を提出する。②年間決められた回数の面接指導(スクリーング)を受講する。③テストに合格するーーという生徒にとって自由度の高い受講スタイルだ。
 丸山氏は「単位制なので留年という概念がなく、最短で3年で卒業することも出来ますし、自分のペースで4~5年かけて卒業することもできます。子どもたちが自分のペースで学べる点が利点です」と話す。

 

文科省、私立通信制の認可基準づくりに乗り出す

 私立の通信制高校の開校が相次ぐ中、不適切な教育活動が横行しているとの指摘もあった。そうした背景から、文科省は、昨年11月、私立通信制高校の認可基準を再整備し、全国の自治体に通知した。群馬県でも国の基準にのっとり、審査基準を明確化した。
 たとえば、教員が指導できる生徒数の上限を教員一人あたり80人の上限を設定。スクーリング(面接指導)についても1教室生徒40人までの上限規定を設けた。
「学校によっては一人で150人を超える生徒を受けもつケースもあったようです」と丸山氏。
 立地に関しては、設置認可をしている県によって基準は異なるが、周辺に風俗施設がないこと、建物の耐震基準などが示された。
 学習塾などが提携して運営されるサポート校であれば、その旨を明示することなども定められた。
 野放し状態だった指導教員についても、添削や面接、試験の評価は各教科の教員免許状を取得している者が実施することが規定された。
「昔は不適切な指導として、教員免許を持たない人がレポートの採点をする学校もあったようです」と丸山氏は過去の実情を明かしてくれた。
 これらの規定を順守して運営されているかどうかは県の監査が数年に1回入るそうだ。

 

変わる 公立通信制高校

 私立通信制高校が広がりを見せる中、文科省は昨年、「公立通信制高校の機能強化」を打ち出した。
 その一つが遠隔授業の基準緩和だ。山間部と都市部では割り当てられる教員の数が違うため、山間部の生徒が特定の教科の授業を受けられない事態も起こりうる。
 たとえば、芸術の授業を受けたい生徒がいたとして、在籍する学校に芸術の指導ができる教員がいない場合、いままでも遠隔授業で受講することできたが、その際の基準が緩められた。
「遠隔で授業を受ける場合、これまでは受ける学校にもその教科を指導する教員を配置する必要がありました。制度改正により補助するのは、極端な話、免許を持っていない職員でも可能になったんです」(丸山氏)

 北海道や高知県では教委が遠隔授業配信センターを設置し、都市部と山間部の教育機会の格差解消に乗り出している。
 また、県によっては全日制課程の高校に通う生徒が不登校状態になった場合、通信制課程での単位を認める「全通併修制度」の整備を進めている。通信制課程での単位は36単位(74単位中)までという上限はあるものの、転学せずに在籍していた全日制高校を卒業できる利点がある。
 丸山氏は「群馬でも同様の動きが出てくるでしょうね」と県内での動きを予測する。

 文科省が昨年発表した22年度の「小・中学校における不登校児童生徒数」は299,048人で過去最多を記録した。
 群馬県も例外ではなく、県教委の調査によれば、22年度の小・中学校における不登校児童生徒数は、4,382人。小学校では10年連続増加、中学校では9年連続増加となっている。
 こうした中、子どもたちの多様な学びの機会を保障する上で、通信制高校の役割はますます大きくなっている。

 

資料

(用語の定義)

新入学…中学卒業後、他の高校に属することなく、4月(または10月)から入学すること。

転入学…今いる高校から次の高校に転入すること(転校)。

編入学…一度高校を中退してから、再度高校に入学すること。

 

※資料は群馬県内にある私立通信制高校(サポート校含む)18校の協力のもと、「群馬県子ども・若者支援協議会」がまとめたものを編集部が作成した。

 

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