高崎でOECDのグローバルフォーラム 県内の高校生も参加
OECD(経済協力開発機構)の「2030年の教育と技能の未来に向けたグローバルフォーラム」が10日、エテルナ高崎で開催された。同フォーラムは2020年に第1回がフランスで行われ、6回目に当たる今年は、日本がOECDに加盟して60周年ということもあり、開催のホスト国となった。「新しい学びに向けた指導のあり方(ティーチング・コンパス)」を検討するのが今回のテーマで、群馬県を含め全国に4つの研究コースが設けられた。群馬県のコースでは「SEL(社会・情動的スキル)について」がテーマ設定され、基調講演やグループディスカッションを行った。
「群馬県が会場に選ばれたのは昨年、県内すべての高校が全国で唯一、OECDの社会情動的スキル調査(SSES)に参加したというのが大きい。本県がSELについて先進的に取り組んでいることがOECDから評価された」とフォーラムをコーディネートした県教育委員会の学びイノベーション戦略室は説明する。
フォーラムには教職員やOECDを含む海外の教育関係者(5カ国1地域)、県内の高校生など113人が出席。うち高校生は11校53人が参加した。
基調講演でイリノイ大学シカゴ校教授のキンバリー・ショーネルト・ライヒル氏は「SELは子どもたちが社会で成功を収めるために役に立つスキルであり、教師の社会・情動的スキルとウェルビーイング(幸福度)が子どもたちの成長に大きく関わっている」とブリティシュ・コロンビア大学(カナダ)での実験結果などを交えながら、SELの重要性を力説した。また県教委の栗本郁夫教育次長からは、児童・生徒を含めた学習者の非認知能力向上に向けた「群馬県教育ビジョン」の取り組みが紹介された。
午前中のグループディスカッションでは参加者が12のグループに分かれ、非認知能力の育成の観点から「教員や生徒がどのように変化する必要があるのか」、「OECDなどの専門機関がどのような支援を行えばよいか」などを話し合った。
1つのグループは海外の教育関係者、教職員、高校生などさまざまな立場の人で構成され、高校生もグループ内に同じ高校出身者が固まらないように配慮したという。こうすることで「多様な価値観があることを学ぶ機会になる」と県教委の担当者は説明する。
【写真】フォーラム内のグループディスカッションの様子
昼には山本一太群馬県知事も歓迎のあいさつに駆けつけ、英語で群馬県の観光や産業の紹介やSTEAM教育など教育分野の先進的な取り組みをアピールした。
午後は、非認知能力の育成を図るモデル実践校「SAH(スチューデント・エージェンシー・ハイスクール)」の指定を受けた、前橋南高校、高崎女子高校、伊勢崎高校からそれぞれの高校での実践事例が発表された。
その後、再びグループディスカッションが行われ、「生徒が自律性を発揮する機会をつくるために、学校はどのような環境を提供できるか」などが議論された。
参加した前橋南高校2年の腰高紗依さんは「海外の教育機関の方や他の高校の先生と一緒に話し合うことができて、貴重な経験になった。自分は翻訳機を使って会話したが、英語で話している高校生もいて刺激になった」と感想を語った。
2日目にあたる11日は県立前橋南高校を会場にして、学校視察やグループディスカッションが行われる予定だ。