【コラム】『人生の師匠』(神子澤修)
私はある人との出会いで人生が変わりました。
その方は、西村貴好さんです。彼は、大阪生まれで現在は56才。
実業家の家庭で生まれ育った彼は、若いときに父親からある事業の経営を任されました。結果を出そうとして、必死に取り組んだそうです。ところが頑張れば頑張るほど、必死になればなるほど社員は次々と会社を去っていく。
「お客様の為を考えたら、もっと出来ることがあるだろう!」「まだまだレベルが低い!」
当時の西村さんは、このような言葉で檄を飛ばしつづけました。しかし、数字は上向いても、人が続かず。数字を追いかけ続ける毎日に。自身の心も荒んでいきました。その後、西村さんは、「覆面調査会社」の経営に乗り出します。
※「覆面調査会社」とは、依頼を受けてお客になりすまし商店や飲食店、ホテル等に出向き、様々な項目についてチェック(評価)する会社。その後追跡調査等も行う。
覆面調査会社は、いわゆるダメ出しの調査をする会社です。
チェックシートをまとめて改善点を報告する。その後追跡調査を行うと、たしかに改善点については改善がみられるが、雰囲気はあまり変わっていない、むしろ次の改善点が見えてくる、の繰り返しだったそうです。
ダメ出しでは、やはりダメだ。
そこで、西村さんは、改善点を指摘するよりも素晴らしい点についてシートにまとめて提出しました。
改善点は100個見つかっていても、そのうちの一つか二つだけを伝え、良いところばかりを伝えるようにしたのです。すると、追跡調査では、指摘していない改善点まで、劇的に改善されていました。西村さんは、その時、気づいたそうです。
「人は、欠点を指摘するよりも、良いところを指摘して気づきを与え、褒めたほうがパフォーマンスが上がるのでは」と。
それから、彼は「一般社団法人 日本ほめる達人協会」を設立して現在に至っています。私は、ネットで西村さんの存在を知り、すぐに会いたいと思い、石川県金沢市で行われた「ほめ達検定」の研修会に参加し、ほめ達検定2級をいただくことができました。それが、今から5年前のことです。
そのことをきっかけとして、私自身も変わり始めました。それまでの私は、生徒の欠点ばかりを指摘して、ネチネチと指導するタイプでした。それがいまでは、少しずつではありますが良いところを褒めて、気づきを与え、導けるように努力をしています。
私に大切な気づきを与えてくれた人生の師匠、西村貴好さんのお話しでした。
▶参考 日本ほめる達人協会 電話 06-6539-1950
桐生大学附属中学校 校長 神子澤 修
プロフィール