ホーム

»

学校ニュース

»

【塾長のショートコラム(1)】「栃木が負けて、東京が勝った」

学校ニュース

一覧はこちら

【塾長のショートコラム(1)】「栃木が負けて、東京が勝った」

オピニオン

みんなの学校新聞編集局 
投稿日:2022.11.02 
tags:全国学力・学習状況調査 文部科学省, 文部科学省, 桐生進学教室

 「第77回国民体育大会・いちご一会とちぎ国体」は東京都の優勝(天皇杯)で幕を閉じました。そして、栃木県は惜しいところで2位でした。
 東京都の総合得点は2436.0で栃木県は2270.5でしたので、その差は165.5で東京都の得点の6.79%でした。つまり東京を100点としたときに栃木は93点だったのであと7点取っていれば優勝できたことになります。

「何やってんだ、とちぎ!」と一瞬思いましたが、すぐに思い直して「さすがは東京!」と心からの賛辞を送りました。
残念ながら私の10000点は没収されてしまいましたが、群馬県大会ではしっかりと30000点を取り返すつもりです。栃木の二の舞を踏まないように今から優秀選手の(中・高校生の)囲い込みと社会人優秀選手の移住(住所だけでも)を促進させておかなければなりません。ガンバレ、群馬県教育委員会!

 

 あ、私はこの制度自体には特に不満はありません。前のコラムでは批判的な文章を書きましたが、それは「不透明さ」や「上からの圧力」に対して批判したのであって、そういうことが公(おおやけ)にされて、県議会でも承認されて、県民の皆さんの(納税者の)同意があればそれ以上に強く反対するものではありません。(多数決もまた民主主義の一つの手段ですので。)

 ところで「さすがは東京!」と『国体』のことを思いながらも、私の頭の中では同時に『学力』のことを考えていました。
 そう、文部科学省が実施している「全国学力・学習状況調査」のことです。
 この調査結果のランキングでは、小学校国語・小学校算数・中学校3科(国語・数学・理科)の全ての「1位」・「2位」・「3位」が秋田県と石川県と福井県で占められていましたが、これは「東京都」が本気を出していないと判断しているからです。私は「東京が本気を出したら地方の県には勝ち目がない」ことを確信しています。
 それはなぜかというと、この「全国学力・学習状況調査」は全国の国立・公立・私立の小学校と中学校のそれぞれ<99.3%>と<95.6%>で、小・中合わせると全国の<98.0%>の学校が参加していますが、別の『実数』で見ると「私立中学」の<765校>のうちの<339校=44.3%>しか参加していません。つまり、「私立中学」のうちの<426校=55.7%>が“不参加”なのです。もちろん単なる数字上の偶然ですが、東京187・神奈川63・埼玉31・千葉24・大阪61・兵庫43・京都26と、令和3年における首都圏と近畿圏の二大都市圏の私立中学の合計数が435校で、この426校という学校数とほぼほぼ同じような値になっています。また、私立中学の多い都道府県を上から順に並べてみると広島・静岡・福岡がそれぞれ29・28・27と京都と千葉を少し上回っているだけで、1位から4位までの東京・神奈川・大阪・兵庫は不動の位置にあり、中でも東京の187校は全国の私立中学校のうちの約4分の1(24%)を占めています。東京の「1強」がみごとに表れています。ちなみに秋田・石川・福井の私立中学校の数はそれぞれ1校・3校・4校です。

 ところで、HPをいくらさがしても“不参加校”の具体的な名前にたどり着くことができませんでした。だから確かなことは言えないのですが、「順当な推測」をすると以下のように考えることができます。
 「もし、この不参加校の<55.7%>の私立中学の中に灘・開成・慶応・早稲田・桜陰・雙葉・女子学院・麻布・武蔵・聖光学院・栄光学園・東海・海陽・洛南・洛星・東大寺・西大和・ラサール・久留米大附設などの全国の“最難関”私立中学があって、そして、もしこれらの学校がすべてこの学力調査に参加した場合、はたして秋田・石川・福井は全国学力・学習状況調査で1位・2位・3位の栄冠を勝ち取ることができたのだろうか」と。少なくとも「中学校3科」部門においては順位の変動が起こったのではないかと思います。(「中学校3科」を国語・数学・英語の3科目にしたらもっと私のイメージした結果に近づくと思います。)

 その根拠となる資料をここに提示します。これはこの調査を実施した文部科学省がそのHPで情報公開してくれているものです。

 

 「グラフ①」は、<数学>における“国・公・私立”を合わせた『全国』の「正答数分布グラフ」で、「グラフ②」は『公立』で「グラフ③」は『私立』=“参加した私立”の分布グラフです。なお柱状グラフの一番右が「16問正解で満点」で一番左が「正解数0」となっています。

 3つのグラフともちょっと見では「グラフのなだらかな山の形」はよく似ていますが、よく見てみると私立の方が「10問から15問までの割合が高く、0問から9問までの割合が低く」なっています。

 「私立なんだから公立と比べて成績が良いのは当たり前だけどそんなに大きな差な無いよね」という感想を素直に持つことができます。

 それでは、「グラフ④」はいかがでしょうか。

※各グラフの縦軸の単位は%

(引用 国立教育政策研究所ホームページより グラフは編集部で作成)

 

 これは『国立』の中学校の「正答数分布グラフ」です。国立中学はそのうちの100%が参加しています。

 明らかに「グラフの形そのもの」が異なっています。この中には群馬大学教育学部附属中学などの各県にある国立大学付属中学だけでなく、筑波大付属駒場・筑波大付属・学芸大学付属・御茶ノ水女子大付属・大阪教育大付属などの“国立難関中学”が含まれています。

 もし全国の“難関私立中学”がこの学力調査に参加したら、その分布グラフは当然「このような形」になるハズです。

 

 もちろん不参加の私立中学426校のすべてが“難関私立中”という訳ではありません。それに進学塾の塾長の私ですら“難関・有名私立中学”の名前を挙げるのにスラスラと出てくるのはぜいぜい40校程度です。(所詮は田舎の進学塾塾長だからかもしれません。)

 しかし、この「学力テスト」は都市部の“難関私立中”に限らず地方の“中堅私立中学”の生徒でも高い得点を取ることが十分に可能です。なぜならば、この「学力テスト」はそんなに高いレベルの問題ではないからです。そこから考えても『私立中』のグラフが「③」のような形であるのは、参加した私立中には、大都市でも地方都市でも「ハイレベルな中学校が多く含まれているという可能性」はあまり高くはないと思えるのです。

 

 ところで、私立の不参加校の割合である<4.4%>という数字を目にした途端に、明確な根拠もないくせにまた“ある数字”が自然に頭の中に浮かんで来てしまいました。

 今の小・中学生の年代は1学年の人口がおよそ100万人ですので、その4.4%は4万4千人に相当します。そして“難関大学”といわれる東大・京大・東工大+東京医科歯科大・一橋大・早稲田・慶応・国公立大医学部医学科・私立大医学部医学科・旧帝大の北海道・東北・名古屋・大阪・九州の各大学の定員の合計がなんとこの4万4千人になるのです。そして、『偏差値70』の出現率も<上位4%>と言われています。

 

 このように、いくら「全国の小中学校の99.3% ,全国の中学校の95.6%を網羅している」といわれても、<残りの4.4%>に『学力の有力選手』がごっそりと隠されている可能性があるわけですから、この調査も正式名称を「一般少国民における全国学力・学習状況調査」に変える必要があるのではないかと思います。

 なお、本家の「国民体育大会」は2024年開催の佐賀県大会から『国民スポーツ大会』へと名称変更されます。

 はたして『国スポ』も、あの手この手を使った開催県が優勝できるのか、それとも有力選手をたくさん抱えている東京都が優勝し続けるのか、注目していこうと思います。

 

※「少国民」というコトバは戦前の軍国主義時代の少年少女たち=やがて“徴兵されて兵隊さんになる”か“銃後を守るようになる”運命にある子供たちを指すときの名称です。

 

プロフィール

丹羽塾長

<現職>

桐生進学教室 塾長

 

<経歴>

群馬県立桐生高等学校 卒業

早稲田大学第一文学部 卒業

全国フランチャイズ学習塾 講師

都内家庭教師派遣センター 講師

首都圏個人経営総合学習塾 講師

首都圏個人経営総合学習塾 主任

首都圏大手進学塾    学年主任

都内個人経営総合学習塾 専任講師

 

 

広告

ページトップへ